KAGRA地下トンネルにKEK大型極低温容器 クライオスタット1号機をインストール

 

大型低温重力波望遠鏡KAGRA全体図(画像提供:東京大学宇宙線研究所)

高エネルギー加速器研究機構(KEK)では、東京大学宇宙線研究所、国立天文台とともに大型低温重力波望遠鏡KAGRAの建設を進めています。 2014年8月20日に、KEKで開発した低温サファイア鏡を格納するための大型極低温容器(クライオスタット)1号機がインストールされました。 このクライオスタットは高さ4.5m、直径2.5m、重量11トンもあり、KAGRAのトンネルを通過出来るギリギリの大きさでした。 このため、専用の台車を製作し、約10時間かけて3.7kmのトンネル内を輸送しました。その後、所定の位置に設置しました。

重力波はアインシュタインの一般相対性理論で予言される現象で、間接的には存在が証明されていますが、いまだ直接検出されたことはありません。 重力波の直接検出には様々な科学的意義があります。 まず、重力波の検出により一般相対性理論、もっと言えば、重力の性質について高い精度で検証が出来るようになります。 また、重力波で宇宙を観測することにより、これまでの光や電波とは異なる新しい天文学を創始することが出来ます。 例えば、ブラックホールの観測などは重力波のもっとも得意とするターゲットです。

KAGARA地下トンネル内での測量風景

しかしながら重力波の直接観測は極めて難しい事でよく知られています。 これは重力波が極めて小さな信号だからです。 しばしば用いられる例えでは、「地球と太陽の間で水素原子1個を探すようなもの」と言われます。 このように小さな小さな重力波の信号ですが、大型のレーザー干渉計型望遠鏡の発展により、発見間近というところまで来ています。

KAGRAは、重力波の発見を目指して岐阜県飛騨市池ノ山地下に建設中の日本の望遠鏡です。 KAGRAのユニークな点は、地下トンネルの中に設置されることと、-253℃まで冷却した22kgの巨大なサファイア鏡を用いる事です。 特に、極低温サファイア鏡は20年間にわたり高エネルギー加速器研究機構で開発を続けてきた先進技術で、これにより重力波望遠鏡の感度を飛躍的に高めることができます。 極低温サファイア鏡の技術は世界でKAGRAだけが持つもので、次世代のヨーロッパの望遠鏡計画(Einstein Telescope)でも導入が検討されるなど注目を集めています。

今回インストールされた大型クライオスタットの開発者であるKEKの木村誠宏准教授は、「粒子加速器科学で培った極低温技術が宇宙観測のための重力波望遠鏡に応用出来たことは、技術者として感慨深い。このような先進技術で宇宙の謎が解明されていくのを楽しみにしている。」と述べています。

Yエンドにインストールした大型極低温容器(クライオスタット)1号機

今後、さらに3台の低温サファイア鏡用大型クライオスタットがKAGRAトンネル内にインストールされます。 2015-2016年に極低温サファイア鏡が導入される予定で、2017年度には本格的な観測が開始される予定です。 この頃には米国やヨーロッパの重力波望遠鏡も稼働し、本格的な重力波天文学がスタートすると期待されます。

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