東京大学宇宙線研究所 梶田隆章所長がノーベル物理学賞を受賞
#トピックス2015年のノーベル物理学賞は、「ニュートリノが質量を持つことを証明したニュートリノ振動の発見(for the discovery of neutrino oscillations, which shows that neutrinos have mass)」という受賞タイトルで、東京大学宇宙線研究所の梶田隆章所長およびクイーンズ大学(カナダ)のArthur B. McDonald博士が共同受賞されました。心よりお喜び申し上げます。
飛行中に異なる種類のニュートリノに変わる「ニュートリノ振動」
ニュートリノの種類が大気を飛行中に変化する「ニュートリノ振動」という現象は、国内では「スーパーカミオカンデ」(岐阜県飛騨市神岡)と呼ばれる検出器を使って実証されました。スーパーカミオカンデは、KEKの元機構長であった戸塚洋二博士(故人)が実験代表者となって建設を進めた実験装置です。梶田所長、そしてKEKの前機構長であった現・岩手県立大学の鈴木厚人学長のみならず、KEKの研究グループも、その開発に多大な貢献を果たしました。戸塚元機構長や梶田所長が率いたスーパーカミオカンデコラボレーションは、大気上層で発生するニュートリノに着目し、ニュートリノ振動を世界で初めて発見、ニュートリノに質量があることを明らかにしたのです。
現時点で最もよく極微の世界を説明できる物理法則である標準理論では、ニュートリノには質量がない、と言われてきました。しかし、梶田所長らの研究によりニュートリノに質量があることがわかり、標準理論で説明できない法則が存在することが示唆されることになりました。
2008年にノーベル物理学賞を受賞した、小林誠KEK特別栄誉教授は「梶田さんの受賞は大変よろこばしいことです。ニュートリノの質量の発見はその後の素粒子研究の方向に大きな影響を与えたもので、受賞は当然と言えます」とその功績をたたえています。
KEKは、大気ニュートリノや太陽ニュートリノなど自然界のニュートリノ観測や陽子崩壊探索などさまざまな素粒子研究を進めるスーパーカミオカンデ実験グループのひとつです。KEKなど国内外の研究機関が参画し、スーパーカミオカンデから約300km離れた茨城県東海村のJ-PARCで人工的に生成したニュートリノを用いてニュートリノ振動研究を進めるT2K実験も、検出器としてスーパーカミオカンデを使って実験を続けています。
T2K実験の前代表であり、スーパーカミオカンデコラボレーションの一員でもあるKEK素粒子原子核研究所の小林隆教授は、「コラボレーターの一員として、大変嬉しく思っています。今後さらにニュートリノ振動の研究を促進していきたいと考えています」と、喜びと意気込みを語っています。
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