KEKキャラバン、11月は静岡、茨城、岐阜、群馬、東京、石川、長野、埼玉、宮城に派遣

 

KEKでは学校や社会施設などで行われる授業のサポートとして、地方自治体、NPO等の団体が企画する講習会や勉強会などに講師を派遣しています。11月は静岡、茨城、岐阜、群馬、東京、石川、長野、埼玉、宮城で実施しました。


「ソフトマターを加速器で見る」と題する講演を実施する瀬戸 秀紀 教授

10月31日(土)と11月1日(日)、沼津工業高等専門学校(静岡県沼津市)で「サイエンスカフェin高専祭~加速器で見る物理学。最先端の研究を体験してみませんか?~」が開催されました。KEKキャラバンでは、「ソフトマターを加速器で見る」、「素粒子の世界」、「高専から加速器研究者への道」をテーマに講演を実施し、両日合わせて約50名が参加しました。

参加者からは、「ソフトマターの新たな有用性について素人なりに考えたいと思った」、「むずかしかったけど、素粒子などの世界には謎がたくさんあるとわかった」、「高専という特殊な環境からの進路についての話が聞けて、とてもためになりました」などの感想がありました。




「素粒子の世界」と題する講演を行う橋本 省二 教授


「高専から加速器研究者への道」をテーマに講演する宮島 司 准教授


つくば市立桜南小学校で超伝導コースターを実演する、田中 賢一 先任技師

11月7日(土)、つくば市立桜南小学校(茨城県つくば市)において、極低温実験を実施し、1年生~6年生約100名が参加しました。

超伝導コースターを用いて、超伝導の磁気的な振る舞いについて体験学習を行いました。低学年の児童は、一人一人コースターをレールに乗せて走らせ、レールから浮いているのに脱線しない不思議を実感してもらいました。また、高学年の児童は、走行体験に加え、超伝導体をレールから持ち上げようとすると吸引力のような抵抗がある事を体験。理科で学習した磁石の性質と比べて超伝導体の振る舞いとの相違点を説明しました。

アンケートでは、「ひやしたでんどうたいはうくがさかさまにしてもすいついていることがふしぎだった」、「低温でうかぶのがふしぎでした。じしゃくでうかぶのは知っていましたが低温は知りませんでした」などの感想がありました。

11月9日(月)、岐阜県立岐阜北高等学校(岐阜県岐阜市)において、「宇宙のはじまり、ビッグバンと加速器」と題する講演を実施し、1,2年生45名が聴講しました。

講演は、KEKの紹介からスタート。原子説についての解説を行った後、素粒子の世界について説明しました。なぜ、ビッグバンが関係あるのかや欧州で行われている大型ハドロンコライダー(LHC)実験についても紹介。最後に、加速器の他分野への応用を解説しました。

参加した生徒からは、「KEKという施設が物理学だけでなく、いろいろな分野の研究に役立っていることも知り、加速器に多くの使い方があることにびっくりしました」、「小さ過ぎる物や大き過ぎる物、目に見えない物はまだ人間にはとらえきれないことが多いけれど、いつかそういうものが全て分かるようになったら良いなと思いました」などの感想がありました。


牛久市立向台小学校で霧箱の説明をする、素粒子原子核研究所広報コーディネータの高橋 将太氏

11月9日には、もう1件の派遣を実施しました。牛久市立向台小学校(茨城県牛久市)において、むこう台子ども会育成会のメンバーを対象に、霧箱作成実験と素粒子講座を実施しました。小学1~6年生とその保護者およそ117名が参加しました。参加者は、グループ毎に霧箱を組み立て、放射線の飛跡の観察を行いました。

実施後のアンケートでは、「ニュートリノはみじかにあることをしりよかったです」、「アルファ線やベータ線を知れてうれしかったです」といった感想がありました。


群馬県立桐生高等学校で講演する山田 憲和 研究機関講師

11月9日には、さらにもう1件の派遣がありました。群馬県立桐生高等学校(群馬県桐生市)において、「高エネルギー物理学-素粒子とは?-」と題する講演を実施し、1年生78名が聴講しました。

講演ではKEK及び、高エネルギー物理学の紹介を行いました。分子/原子から原子核、陽子/中性子、素粒子の発見に至る経緯を概説した後、「力」とはどういうことかについて触れ、ヒッグス粒子、ニュートリノ振動、未解決問題について解説を行いました。

アンケートでは、「知らないことを知ることも研究の中では前進なのだということに気付かされました」、「『高エネルギー加速』を研究することで、新しい素粒子の発見だけでなく、宇宙のことまでわかってしまうという所がすごいと思った」などの感想がありました。


茨城県立土浦第一高等学校で講演する小松原 健 教授

11月10日(火)、茨城県立土浦第一高等学校(茨城県土浦市)にて、「霧箱を用いた観察と素粒子物理学の世界」と題する講演と霧箱観察実習を実施し、1、2年生39名が参加しました。

前半に、霧箱による放射線の飛跡の観察を実施しました。後半では、霧箱の物理として、過飽和状態、放射線について解説。続いて、素粒子を「見る」とはどういうことかについて説明しました。最後に、高校物理から素粒子物理へとして、高校以降に学ぶ、電子顕微鏡、クォーク、ニュートリノを紹介。KEKや加速器についても説明しました。

実施後のアンケートでは、「一つ一つのプロセスを経て考えるのが大変だと思った。科学はものすごく広い範囲があると改めて思った」、「実際に放射線を目で捉えてることができた後に、それの仕組みについて知ることができたので理解しやすかったです」などの感想がありました。


板橋区歯科医師会館で講演を行う加藤 龍一 准教授

11月11日(水)には、板橋区歯科医師会館(東京都板橋区)で、「加速器と医学薬学生物学」と題する講演を実施し、東京都板橋区歯科医師会の会員32名が聴講しました。

講演冒頭では、KEKの加速器を使った実験が小林博士・益川博士のノーベル賞に受賞につながったことを紹介しました。続いて、実は多くの医療機関で、主にガンの治療を目的に加速器が使われていることを紹介し、やや大型のものは、最近よく聞く「高度先進医療」のなかの「粒子線治療」の主役であると説明。講師自身は、加速器そのものでなく加速器から発生するX線を使って生物学の研究を行っていると説明しました。加速器から発生する非常に明るいX線を使うことで、電子顕微鏡でも見えないような小さなタンパク質などの生体高分子の立体構造を決定することができること、どのようにしてそれを行うのか、そして得られた結果から分かった私たちの体の中で営まれている生命現象について紹介しました。最後に、構造生物学が最新の創薬の現場で活用されている例として、薬の開発を紹介。ターゲットとなるタンパク質分子の立体構造に基づいて薬分子を設計するという新しい方法が展開されていて、インフルエンザ薬のタミフルなどはそのようにして開発されたものであると説明しました。

アンケートでは、「天然由来の創薬からタンパク質の構造をつかむことよりデザインができる時代になっていることにびっくりしました」、「投薬することにより、ウィルスだけでなく人間のタンパク質にも薬が結合して副作用が起こる事がビジュアル的によく分かりました。」などの感想が寄せられました。


石川県高等学校文化連盟理科部のセミナーで講演する佐藤 皓 研究員

11月13日(金)、石川県立金沢二水高等学校(石川県金沢市)において、石川県高等学校文化連盟理科部が主催する「高校生のための実験・実習セミナー」が開催されました。KEKキャラバンでは、「宇宙のはじまり、ビッグバンと加速器」と題する講演を実施し、1、2年生75名が聴講しました。

最初にKEKとつくば学園都市について簡単に紹介。ミクロな世界をどう観察するか、一方でマクロな世界をどう観察するか、について概説しました。ノーベル賞などのトピックスを引用しつつ、それに付随する素粒子論・宇宙論の最先端の認識について解説。特にタイムリーな話題であるニュートリノ実験についてやや詳しく説明しました。続いて、重要な実験設備である加速器について歴史的発展と、世界の現状について説明し、様々な社会的ニーズに対応した応用がなされていることを説明しました。

アンケートでは、「加速器が宇宙の事や医療などたくさんのことに利用されていると知り興味が湧いた」、「大きな宇宙のはじまりがとても小さな素粒子によるものということは驚きだった」などの感想がありました。


辰野町立辰野中学校で講演する藤本 順平 講師

11月20日(金)、辰野町立辰野中学校(長野県上伊那郡)において、2年生27名を対象に、「宇宙の謎に迫る」と題する講演と霧箱観察実習を実施しました。

前半の講演では、KEKを紹介。宇宙の謎に迫るための実験がどんなものかを説明しました。続いて、原子説、加速器の説明、素粒子の世界について解説。後半には、霧箱観察実習を行い、全員が放射線の飛跡の観察に成功しました。

アンケートでは、「宇宙についてや色々な物が粒子で出来ているなどの話がとてもおもしろかったです」、「素粒子という名前はしっていたけれど、こんなにも、種類があるとしってびっくりした」などの感想がありました。


エクセラン高等学校で講演する桝本 和義 特別教授

11月20日(金)には、もう1件の派遣を実施しました。エクセラン高等学校(長野県)において、2、3年生27名を対象に、「放射線を正しく理解し安全な生活をしましょう」と題する講演を実施しました。

前半の講演はKEKの紹介からスタート。続いて、放射能の話、震災後の原子炉事故の影響について紹介しました。後半は、放射性物質の食物や人体への影響について解説。「放射能は目で見える?」と題して、放射性物質の生物中での分布を可視化する方法、測定結果、そして放射能の生物濃集のメカニズムについて紹介しました。

アンケートでは、「放射線は医療などで、私たちの役に立っているので、使い方が大切だと思いました」、「放射線について怖がっているだけではなく、やはり学ぶことが重要だと感じた」などの感想がありました。


埼玉県立川越女子高等学校で講演する多田 将 准教授

11月21日(土)、埼玉県立川越女子高等学校(埼玉県川越市)において、1~3年生25名を対象に、「宇宙や素粒子について」と題する講演を実施しました。

アンケートでは、「実験が失敗することで新しい発見が得られるのは本当なのだと思いました」、「ニュートリノが何者なのか、発見がどれほどすごいものなのか、何も知らない状態でしたが、お話を聞いて納得しました」などの感想がありました。


東北学院大学で講演する金児 隆志 研究機関講師

11月21日には、もう1件の派遣を実施しました。東北学院大学(宮城県仙台市)にて、「巨大加速器で解き明かす宇宙の謎」と題する講演を実施し、2年生20名が聴講しました。

講演のキーワードは、素粒子とエネルギー。KEKの紹介を実施した後、素粒子物理学とは何を研究する学問かについて解説しました。また、暗黒物質・暗黒エネルギーの存在や反物質の消失などの宇宙の謎について説明。加速器の原理を解説し、過去現在未来の加速器実験の例(KEKのKEKB/Belle、欧州の大型ハドロンコライダー(LHC)、国際リニアコライダー(ILC)など)を紹介しました。最後に、素粒子物理と社会の関わり(放射線医療、放射光の利用など)について説明しました。

アンケートでは、「正直言って『素粒子研究が何に役に立つのか?』と思っていましたが、加速器研究の技術を応用することでPET検診等医療現場ではその技術が用いられていることを知り、自分の考えを改めなくてはいけないと感じました」、「巨大科学の存在の意義について深く理解ができ、納得できた」といった感想が寄せられました。


長野県総合教育センターで講演する藤本 順平 講師

11月21日には、さらにもう1件の派遣を実施しました。長野県総合教育センター(長野県塩尻市)において、「宇宙・物質・生命の謎に挑戦する加速器科学ー高等学校理科でどのように伝えるかー」と題する講演を実施しました。長野県理化学会物理専門部に所属する、高等学校の物理教員、およそ10名が参加しました。

講演では、まず、KEKの取り組みについて説明。続いて、「素粒子とはと題し、現代社会を支える原子説や、加速器の原理、標準理論について解説しました。最後に、「物質・生命の謎を解く」とし、放射光研究、加速器の医療応用、中性子を用いた研究について紹介しました。

アンケートでは、「最先端医療と加速器がここまで密接に関係があると思いませんでした。本当に驚きました」、「素粒子は難しいという印象があり、高校の物理でも私の授業ではあまり触れることがありませんでした。今日、お話をお聞きし、宇宙の構造や医療への応用などこれからも大いなる可能性のある分野でとても面白い分野だと感じました」などの感想が寄せられました。


石岡市立国府中学校で講演する多田 将 准教授

11月30日(月)、石岡市立国府中学校(茨城県石岡市)において、「素粒子の世界から宇宙を探る」と題する講演を実施しました。中学1~3年生とその保護者160名が聴講しました。

講演後のアンケートでは、「宇宙から素粒子まで大きさを比較することによって、宇宙の大きさ、素粒子の小ささを改めて知ることができました」、「世界をリードする研究所がすぐ近くにあってすごいと思いました」といった感想がありました。

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