5月18日(水)、19日(木)、韓国ソウルの韓国高等科学院(KIAS)において、TYL日仏素粒子物理学研究所(TYL-FJPPL)のワークショップが開催されました。本ワークショップは毎年恒例で仏韓研究所(FKPPL)との合同で開かれ、昨年の沖縄科学技術大学院大学(OIST)に次いで、第5回目となります。全体で、80名を超える参加(日本より23名、フランスより30名)があり、素粒子・原子核物理、加速器科学、計算機科学などの分野で行われている日仏韓の共同研究の成果が発表されました。
KEKは日仏共同事業の一環として、日本初の国際的女性物理学者である湯浅年子博士の名を冠する「湯浅年子ラボラトリー(TYL)」を運営し、フランス原子核素粒子研究所(IN2P3/CNRS)、フランス宇宙基礎科学研究所(Irfu/CEA)と連携しながら日仏両国の共同研究事業を推進しています。
【写真左】TYL ヤング・インベスティゲーター・アワードを受賞したシュヴー氏(右から2人目)と3 人のTYL Co-directors.
【写真右】副賞として手渡されたクリスタル楯
このワークショップ初日には、昨年度設立された日仏両国の共同研究に従事した若手研究員を対象とする「TYL ヤング・インベスティゲーター・アワード」の受賞者が発表されました。選考委員による慎重な審査の結果選ばれたのは、DC実験※1で活躍し、現在ボルドー大学CENBG(CNRS/IN2P3)研究所のリサーチ・アソシエイトとして研究を続けている、エマニュエル・シュヴー氏です。
シュヴー氏は、DC実験のキーである光電子増倍管(PMT)※2システムの構築と検証においてチームを率いて活躍し、DC実験の2つの検出器のうちの近接検出器の立ち上げ成功へと導いた立役者です。その後のデータ解析においても、ニュートリノ振動の測定などDC実験の成果に重要な寄与を行いました。
シュヴー氏は、DC実験の日本側参画機関の一つである東北大学の研究員であったこともあり、DC実験の日本人研究者によると、ラーメンと日本酒をこよなく愛するたいへんな日本通でもあるとのことです。
KIAS中庭での参加者グループフォト
※1 DC実験・・・フランス・ショー村にある原子炉の近くに2つの検出器を設置し、原子炉で発生したニュートリノを観測する実験
※2 光電子増倍管(PMT)・・・光電効果を利用して光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電管を基本に、電子増倍機能を付加した高感度光検出器