KEKキャラバン、10月は京都、岩手、群馬、岡山、茨城に派遣

 

KEKでは学校や社会施設などで行われる授業のサポートとして、地方自治体、NPO等の団体が企画する講習会や勉強会などに講師を派遣しています。10月は5件、京都、岩手、群馬、岡山、茨城の1府4県で実施しました。

(1)10月4日(火)、京都市立塔南高等学校(京都府京都市)
「放射線とその利用」に関する講義と霧箱による放射線の観察実習を実施し、2、3年生56名が参加しました。KEKのミッションについて紹介した後、放射線の基礎知識、素粒子・原子核物理について講義を実施。特に最近のトピックスであるニュートリノ振動についてはやや詳しく説明しました。続いて、霧箱実験を実施。霧箱は先方の教員が考案したものを利用し、ほぼ全員が飛跡の観測に成功しました。その後、先方の教員の発案による、校内で採種した埃を線源にして測定をしたが、結果はバラバラでした。アンケートでは、「放射線は、目では見えないので遠く感じていたが、今回観測できて身近に感じられた」、「『研究は根気が必要』という言葉が印象に残りました」などの感想が寄せられました。

(2)10月15日(土)、岩手県工業技術センター(岩手県盛岡市)
「公開デー2016」 が開催され1,725名が来場しました。KEKでは、「国際リニアコライダーってなんだろう?」のコーナーに、人形紙芝居の講師とアシスタントを派遣。小学生を中心に240名が参加し、人形紙芝居「そりゅうし村のゆかいななかまたち」を見て、国際リニアコライダー(ILC)について学習しました。


京都府立塔南高等学校で霧箱観察をする生徒たち


岩手県工業技術センターでの人形紙芝居の実施風景

(3)10月17日(月)、群馬県立桐生高等学校(群馬県桐生市)
2年生60名を対象に「高エネルギー物理学」と題する講演を実施しました。まず、KEKで行っている研究の概略を説明。その後、宇宙の歴史について簡単に紹介する中で素粒子物理学が果たす役割を説明しました。素粒子物理学については、水分子は素粒子ではないことを説明した後、ラザフォードの実験をベースにどうやって原子が原子核と電子からできていることが分かったのかを解説しました。その後の実験で陽子や中性子はクォークからできていること、及びこれまでに見つかっているフェルミオンについて触れました。次に、素粒子間に働く力が何であるかを概説。その後、近年の発展を紹介する中で、ヒッグス機構、ヒッグス粒子の発見、ニュートリノとニュートリノ振動の発見、重力波の観測、ダークマター、ダークエネルギーの簡単な紹介しました。実施後のアンケートでは、「宇宙空間の端、外側がどうなっているのか気になる」、「物理のことはよくわからなかったけど、実験内容や結果、それで分かることなどが面白かった」といった感想が寄せられました。

(4)10月29日(土)、岡山大学(岡山県岡山市)
岡山物理コンテスト2016において、「ニュートリノ」と題する講演を実施し、中学1年生~高校3年生まで約160名が参加しました。アンケートでは、「ニュートリノの研究が日本が最も進んでいる国だということを知って驚いた」、「改めてニュートリノ研究の規模の大きさやすごさ、実験の結果がもたらすものの偉大さがわかった」などの感想がありました。


群馬県立桐生高等学校で講演する山田 憲和 研究機関講師


岡山大学で講演する多田 将 准教授


つくば桜並木学園つくば市立桜南小学校で超伝導コースターの実演をする田中 賢一 先任技師

(5)10月29日(土)、つくば桜並木学園つくば市立桜南小学校(茨城県つくば市)
超伝導コースターを用いて、超伝導の磁気的な振る舞いについて体験学習を実施し、1~6年生、約80名が参加しました。低学年対象には、理科に興味を持たせるよう、個々の児童にコースターをレールに乗せて走らせる体験をさせ、レールから浮いているのに脱線しない不思議を実感させました。高学年の児童には、走行体験に加え、超伝導体をレールから持ち上げようとすると吸引力のような抵抗がある事を体験させ、理科で学習した磁石の性質と比べて超伝導体の振る舞いとの相違点について説明しました。実施後のアンケートでは、「超伝導コースターがさかさになっても落ちないのがふしぎだった」、「実験をみてぼくも科学者になってみたくなりました」などの感想が寄せられました。

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