照沼信浩教授が平成基礎科学財団「第8回折戸周治賞」を受賞
#トピックス照沼信浩教授(KEK加速器研究施設)が、「電子加速器ナノビーム技術の先駆的成果」の研究業績により、公益財団法人平成基礎科学財団主催の第8回折戸周治賞を受賞し、3月20日(月)東京大学小柴ホールにおいて表彰式が開催されました。
KEKをはじめとする、世界各国の高エネルギー加速器の研究所では、次世代の高エネルギー加速器として、電子・陽電子リニアコライダーの開発研究を進めています。リニアコライダーの実現のためには、加速器の加速効率を向上させることや、加速空洞を量産化すること、そしてナノメートル(100万分の1ミリ)の大きさでビームを衝突させるための高度なビーム制御技術の開発が重要な課題です。この高精度のビーム制御技術の確立を目指し、国際協力によってKEKに建設された世界で唯一の試験加速器ATF、ATF2には、世界中から多くの研究者が訪れています。ATFでは光を細く絞って高品質(低エミッタンス)化したビームを生成するための技術を、ATF2では作られたビームの制御や、衝突点に収束させるための技術をそれぞれ研究しています。
照沼教授は、ATFでの研究に当初から携わり、ATF2における国際チームの代表としてビーム制御技術の研究を主導しています。先駆的な手法を多数導入することにより、世界最高品質の電子ビームと、その制御技術を実現し、リニアコライダーで要求される精度をほぼ達成しました。これらの技術は、リニアコライダーに限らず、高精度のビームを必要とする様々な加速器にも活用できる非常に画期的な成果です。
高精度のビームを実現するためには、ビームラインを構成する収束用電磁石などの装置類を高い精度で設置する必要があります。ATF、ATF2でも、それぞれの装置類を極めて精密な可動機構を用いて制御しています。2011年に発生した東日本大震災では、地盤変動によりATF、ATF2ともその一部が破損したり、装置類が大きくずれたりする深刻な被害が発生し、研究は中断を余儀なくされました。今回の成果は、こうした被害からの復旧作業を経て達成されたものです。
今回の受賞を契機に、ATF、ATF2における研究がますます進展することが期待されます。
折戸周治賞を受賞した照沼教授(前列右から2人目)。平成基礎科学財団の小柴昌俊理事長(前列中央)や、折戸周治賞選考委員会の山田作衛委員長(後列右端)など関係者とともに。
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