「いろいろな人が参加しやすい研究発表・情報共有の場を」 -「環境放射能」研究会の取り組み
#ハイライト #共通基盤放射能・放射線の測定を専門とする研究者に加え、技術者、学生などが集まり研究発表・情報交換を行う「環境放射能」研究会が、発足から18年目を迎えました。2011年の東京電力福島第一原子力発電所での事故(東電福島第一原発事故)を受けて、参加者は増加。「放射能についての科学的、研究的な意味からの情報交換の場」として、参加者は自治体の関係者なども含め、幅広い分野に広がっています。
研究会は、1999年に起きたJCO臨界事故をきっかけに2000年にはじまりました。加速器施設や原子力施設等の周囲の環境放射能に関する調査や研究は、それまではそれぞれ施設固有のものとして、公表されずに埋もれてしまうケースもありました。このようなテーマで、研究者が議論を深める場が少なかったことがその原因の一つでした。この年に発足した「日本放射化学会」で、参加者から交流の場としての研究会開催の提案があったことが、きっかけでした。
研究会の参加者数は、震災前は100人から130人程度でしたが、2012年以降は東電福島第一原発事故に関する情報交換を目的に参加者が増加し、今年3月に開催された第18回研究会では207人となりました。理化学研究所の岡野眞治氏による特別講演「放射能との付き合い70年」など、3日間にわたり87の発表が行われ、その所属も、研究機関や大学、自治体の水産、林業、農業等の試験場の関係者、一般住民の方々など多岐にわたりました。 2012年以降の研究会では、発表の7割ほどは、東電福島第一原発事故関連のものとなっています。2016年に事故から5年を迎えたことを機に、これまでの研究、発表を取りまとめる活動をスタートし、2017年3月にまとめ冊子を発行しました。研究会の代表世話人で、KEK放射線科学センターの別所光太郎准教授は、「広く一般の方向けに、どういうことが科学的に分かっているのか伝えられたらと思う。研究者として、自分なりにできることがあるのではないか、という思いで活動しています」と話します。冊子版、データ版ともに無料配布し、研究をする関係者にとっても貴重な資料となっています。 (参考:トピックス 2017年6月14日「福島第一原発事故による環境放射能についての研究成果をまとめました」)
環境放射能研究は、放射性核種の空間分布や時系列データなど、多様な情報を共有、議論し、多くの報告による知見や考察も関連付けて、協力して取り組むことが、他の研究分野以上に求められます。その中で、研究会は貴重な役割を担っていると言えます。同センターの三浦太一教授は、研究会では、自治体の関係者など研究者とは違った視点で放射能・放射線を測定している参加者もおり、「研究者はすぐに成果を求めがちだが、環境放射能の研究では地道にやっていかないと変化がわからないこともある。または、変化しないことも大事だったりします。そういった意味で教えてもらうことも多い」とその意義を話します。研究会は、今後も毎年3月ごろに開催される予定です。
「環境放射能」研究会論文集も公開しています。
-第14回(2013年開催)
-第15回(2014年開催)
-第16回(2015年開催)
-第17回(2016年開催)
-第18回(2017年開催)
【お問い合わせ】
「環境放射能」研究会事務局 高エネルギー加速器研究機構 放射線科学センター内
E-mail:envconf★ml.post.kek.jp (★を@に変えてください)
研究会HP:http://rcwww.kek.jp/enviconf/index.html
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