エネルギー変換デバイスの高性能化に新たな道筋 層状結晶化合物の乱れた構造がもたらす機能発現のメカニズムを原子レベルで解明
#J-PARC #プレスリリース- 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構
- J-PARC センター
- 公益財団法人高輝度光科学研究センター
- 一般財団法人総合科学研究機構
概要
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 児玉敏雄、以下「原子力機構」という)、J-PARC センターのリ・ビン博士研究員と川北至信 不規則系物質研究サイエンスグループリーダーらは、SPring-8 の X 線ビームや J-PARC の中性子ビームなどを用いた実験的解析とコンピューターシミュレーションや材料情報科学に基づく理論計算を組み合わせたことで、 層状結晶化合物セレン化クロム銀(AgCrSe2)の超イオン伝導体への相転移現象と熱電材料としての機能発現のメカニズムを原子レベルで解明することに成功しました。
層状結晶化合物 AgCrSe2を 450 K(177 ℃)に加熱すると、層状結晶中の銀原子層の構造が乱れて液体のようにふるまう「超イオン伝導体」へ相転移し、この液状化が物質内部での熱 伝導を抑制していることを突き止めました。この性質は、熱を効率よく電気に変換する熱電材 料註3として適しています。また、層状結晶を構成する原子を他の原子に置き換えた場合でも、 AgCrSe2 と同様に安定した構造の化合物となることを理論的に示しました。これらの結果により、エネルギー変換デバイスとして社会に有用な熱電材料の高性能化に新たな道筋を開くものであると期待されます。
本成果は、原子力機構、J-PARC センター、公益財団法人高輝度光科学研究センター(JASRI、理事長 土肥義治)、一般財団法人総合科学研究機構(CROSS、理事長 横溝英明)、 米国、ドイツ、中国との国際共同研究の成果であり、2018年1月16日付で英国科学誌『Nature Materials 』に掲載されました。
発表のポイント
- エネルギー変換デバイスとして期待される層状結晶化合物セレン化クロム銀(AgCrSe2)の機能発現のメカニズムを原子レベルで解明しました。
- AgCrSe2 の機能発現のためには、結晶中の銀原子の層が液体のようにふるまうことで物質内部の熱伝導を抑制していることが重要であることを突き止めました。
- 本研究をもとに、層状結晶化合物の中から同じメカニズムで熱伝導を抑制する物質を探索することで、エネルギー変換デバイスとして社会に有用な熱電材料の高機能化に新たな道筋を開くことが期待されます。
詳しくは、プレスリリース(PDF)をご参照ください。
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