シンポジウム「物質と宇宙の基礎研究と それがもたらす最先端産業技術」が開かれました
#トピックス #加速器物質と宇宙の謎を解明する基礎研究が進むなか、そこからスピンオフした最先端産業技術をテーマにしたシンポジウム「物質と宇宙の基礎研究とそれがもたらす最先端産業技術」が3月17日、早稲田大学西早稲田キャンパス(東京都新宿区)で開かれました。
応用物理学会主催の春季学術講演会特別シンポジウムで、多摩六都科学館と KEK が協力して行われました。同学会関係者を中心に学生やサラリーマンなど300人以上が参加。ほぼ満席となった会場では、次世代の直線衝突型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」計画の意義とその日本への貢献、スピンオフで生まれた技術の医療や産業への応用などについて、熱心な議論が展開されました。
冒頭の講演は、小林誠・KEK特別栄誉教授の「基礎科学と加速器」。仁科芳雄博士のサイクロトロン建設から始まり、高エネルギー物理学研究所の設立、陽子シンクロトロン、フォトンファクトリー、トリスタン、Bファクトリー、J-PARCの建設と進み、「KEKとともに戦後の加速器はあった」と日本の加速器の歴史をまとめました。そして自身の研究成果でもある「CP対称性の破れ」についても解説、会場からは「クォークが6種類あるという直感みたいなものがあったのでしょうか」などの質問が出ました。
続いて、駒宮幸男・東京大学教授がILCの物理的な意義について話しました。素粒子の質量の起源となる、素粒子標準理論を超える窓ともいうべき「ヒッグス粒子」について説明した後、標準理論を超える未解決の重要課題をいくつか挙げて、「ILCの核心は素粒子物理学の大分岐路(時空概念の拡張か、物質階層性の深化か、それとも全く新しい原理なのか)の選択である」と語りました。
KEK前機構長の鈴木厚人・岩手県立大学学長は、ILCを東北地方に誘致する計画について「ILCを誘致することで地方都市をグローバル都市に変革し、地域主導で成長する国づくりを目指すべきである」と主張。日本人と外国人が混ざり合って居住・生活する多文化共生社会の重要性にも触れました。
浦川順治・KEK名誉教授の講演テーマはILC計画におけるレーザー・ワイヤー(電子ビーム形状測定装置)開発の意義について講演。早野仁司・KEK教授はILCで使われる超電導加速空洞の表面特性の改良技術について説明し、「超伝導加速空洞の内表面の超伝導性能と表層構造が加速性能を決める」と、その重要性を語りました。また、上坂充・東京大学教授は、小型加速器の産業から医療までの幅広い応用事例、片岡淳・早稲田大学教授は最新の放射線計測技術、とくにX線カメラやガンマ線カメラなどの宇宙観測から医療までへの応用について解説しました。
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