「科学的知見に大きな飛躍」 - 世界の科学者からの国際リニアコライダーを支持する声明
#トピックス #加速器 #素核研KEKも参加するリニアコライダー・コラボレーション(LCC)からのプレスリリースを翻訳転載します。 KEKは加速器空洞や超伝導リニアック加速器、試験加速器、測定器の開発/設計、ILC加速器本体や周辺施設の全体設計、そしてILC実験のシミュレーション研究を進め、リニアコライダーの実現に向け貢献しています。
日本における将来の粒子加速器について話し合う国際会議に集まった科学者は、国際リニアコライダー(ILC)計画の早期実現を呼びかける声明を発表しました。
ILCはスイスの欧州合同原子核研究機関(CERN)の大型ハドロンコライダーとそのアップグレード計画と相補的な役割を果たす加速器です。 2015年には、東京で開催された国際会議でILCの科学的正統性への強い支持を表明していますが、 リニアコライダー・コラボレーション(LCC)とアジアリニアコライダーワークショプ2018(ALCW2018、福岡県で開催)の参加者は、 ILCの科学的な重要性を再認識し、計画の仕様変更に基づいて声明の更新版を発表するものです。
声明文本文
ILC福岡宣言「国際リニアコライダーの実現を目指して−更新版」
2018年5月31日、福岡
2015年に東京で行われたリニアコライダーワークショップに集まった科学者は、国際リニアコライダー(ILC)の迅速な実現の科学的正当性に対する強い支持を確認する声明を発表した。 リニアコライダーコラボレーション(LCC)と2018 アジアリニアコライダーワークショップ(ALCW2018)に世界から集まった参加者は、ILC の科学的重要性を再確認する。 我々はプロジェクトの実現に近づいており、今は決定的に重大な段階である。
(1)欧州合同原子核研究機関(CERN)の大型ハドロンコライダー(LHC)の結果は、我々が宇宙の起源と歴史を明らかにするための探求の岐路に立っていることを示唆している。 現在、精密測定、特にヒッグス粒子の特性の測定は、我々が宇宙の理解を深めるために不可欠な次のステップであることがわかっている。 250ギガ電子ボルト(GeV)の重心系エネルギーにおけるILCでの電子−陽電子相互作用の正確な測定は、我々の科学的知見に飛躍をもたらし、LHCとSuperKEKBの今後の成果とともに、素粒子物理学の究極の理論と、宇宙の深い理解に向け研究を進展させるであろう。
(2)我々は長年にわたり、産業界と協力し、世界各国の政府と協議を行なってILC の準備を進めてきた。ILCは現在最も成熟し、かつ実現可能な電子・陽電子衝突加速器のプロジェクトであり、線形加速器としてのエネルギー拡張性も有している。 ハンブルクの欧州自由電子レーザー(XFEL)の運用の成功、シカゴ近郊のフェルミ国立加速器研究所や他研究所における超伝導研究開発の最近の進歩、また重心系エネルギーを250 GeV に変更することによるコスト削減は、当該エネルギーにおける物理実験の能力を維持しつつ、ILC の技術的および財務的な実現可能性を向上させた。 ILC のために開発された超伝導技術は、加速器産業および医療用途において大きな波及効果をもたらすものだ。我々は、新しいILC の設計に基づく提案に対する日本政府の評価プロセスに深く謝意を表する。
(3)ILC は国際プロジェクトとしてのみ実現することができる計画であり、本プロジェクトのホスト国が国際交渉を導くべきであると考える。 ILC 建設への協力を含む、素粒子物理学における欧州の未来戦略の更新作業が来年初めに始まるため、今年、日本政府からの議論の開始に前向きの姿勢が示される肯定的なメッセージが提示されることが非常に重要となる。 この更新作業は、世界中の高エネルギー物理学計画の将来について、欧州以外の地域にも大きな影響を与えるものである。 更新作業に関する議論においては、我々はILCの科学的論拠を強く主張する予定であるが、日本政府から積極的なメッセージが時宜を得て伝えられることが不可欠である。
- リン・エバンス
- LCC ディレクター
- LCCとALCW2018の科学者
注: これは研究者による日本語訳であり、正文は英語版である
背景
ILCは次世代の素粒子加速器計画で、宇宙を構成する素粒子と宇宙を支配する力について研究することが目的です。 ILCは、2012年にヒッグス粒子を発見したCERNの大型ハドロンコライダーと相補的な役割を果たすことが期待されています。 ヒッグス粒子を始めこれまでの発見をより深く解明するこでき、運用後すぐに成果が期待されています。 ILCは世界で最も洗練された科学計画の一つです。 ILCの実現には真の国際協力が必要となります。
リニアコライダー・コラボレーションはILCおよびCLIC加速器計画に携わる世界の研究者で構成される組織です。 ディレクターは前LHCプロジェクト・ディレクターのリン・エバンスであり、世界の加速器および測定器の開発研究を取りまとめています。 ILCの技術的・科学的詳細については、下記報告書(英語)をご覧ください。
- ・The International Linear Collider Machine Staging Report 2017
- ・Physics Case for the 250 GeV Stage of the International Linear Collider
連絡先
- ILCコミュニケーター(communicators@linearcollider.org)
- 高橋 理佳、KEK、日本、+81-29-879-6291, rika.takahashi@kek.jp
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