ILCの科学的な重要性への揺るぎない信念:世界の科学者からの国際リニアコライダー実現に向けた声明

 

KEKも参加するリニアコライダー・コラボレーション(LCC)からのプレスリリースを翻訳転載します。 KEKは加速器空洞や超伝導リニアック加速器、試験加速器、測定器の開発/設計、ILC加速器本体や周辺施設の全体設計、そしてILC実験のシミュレーション研究を進め、リニアコライダーの実現に向け貢献しています。

2018年10月25日、テキサス州アーリントンにて

リニアコライダーに関する国際会議(LCWS2018)に参加し、将来の粒子加速器について話し合うため、米国、テキサス州、アーリントンに集まった科学者は、国際リニアコライダー(ILC)計画の日本での実現に向け、あらゆる努力を惜しまないとの強い決意を表明する声明「テキサス宣言」を発表しました。

世界の高エネルギー物理研究者は、すでに2015年には東京で、2018年5月には福岡県で開催された国際会議でILCの科学的意義と技術的メリットを強調する声明を出しています。 テキサス宣言で、リニアコライダー・コラボレーション(LCC)とLCWS2018の参加者は、ILCへの揺るぎない信念と、ILCの実現に対する強固な決意を再度表明します。

声明文本文

2018年10月24日

ヒッグスファクトリーとしてのILC実現に向けた決意の声明「テキサス宣言」

「ILCを実現する」という確固たる決意のもと、テキサス州アーリントンで開催されている将来リニアコライダーの国際ワークショップ(LCWS2018)に、世界中から科学者が集まっている。 世界中の仲間とともに、我々はここに、ILCの科学的意義について揺るぎない信念を持って「テキサス宣言」を発表し、ILCの成功のために必要となる全てのことを遂行するとの強固なコミットメントを表明する。

ILCは、宇宙の理解を前進させる新しい最適な実験施設である。 ILC計画は、30年以上にわたる国際協力によって進展してきた。 我々はILCをヒッグス粒子を中心とする1兆電子ボルトの未踏のエネルギー領域(テラスケール)時代の素粒子物理学をリードする実験装置として発案した。 欧州合同原子核研究機関(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)でのヒッグス粒子の発見により、その研究に必要なエネルギーが決定した今、我々は、ヒッグス粒子を大量に作り出す「ILCヒッグスファクトリー」の具体的な計画を持っている。 LHCにおけるその後の測定は、ヒッグス粒子の精密研究の重要性をさらに強固なものとした。 ILCの衝突エネルギーは、ILCでのヒッグス粒子の精密研究の結果によって必要となれば、容易にアップグレードすることができる。 ILCの開発期間を通じて、我々の当初のモチベーションはますます明確かつ強固になってきた。

ILCは、新たな革新的技術の源泉である。 我々はILCの技術にも自信を持っている。 世界的な共同研究が超伝導加速技術の発展に非常に大きな進歩をもたらし、飛躍的に性能が向上した。 ILCのために開発されたこの技術は、例えば、現在最先端のX線や中性子の施設で欠かせないものになっている。 我々が研究を進展させることに伴い、広く科学と社会に利益をもたらすイノベーションがもたらされるのである。

今こそ前に進む時である。 LCWS2018の参加者によって代表される国際コミュニティーは、ILCを実現するという決意を持っている。 日本政府がILCをホストする意思を表明すれば、我々は自身の取り組みを大幅に拡大し、必要な国際合意を得るため、それぞれの政府に対してこれまで以上に集中的に働きかける。 我々は、前進するためのシグナルを待ち望んでいる。 そしてILC計画が本格的に動き出したら、我々は約束通りの成果を達成する用意がある。

世界にまたがるリニアコライダーコラボレーションを代表して、
LCWS2018に参加している科学者一同

注:これはLCWS参加研究者による日本語訳であり、正文は英語版である

背景

ILCは次世代の素粒子加速器計画で、宇宙を構成する素粒子と宇宙を支配する力について研究することが目的です。 ILCは、2012年にヒッグス粒子を発見したCERNの大型ハドロンコライダーと相補的な役割を果たすことが期待されています。 ヒッグス粒子を始めこれまでの発見をより深く解明するこでき、運用後すぐに成果が期待されています。 ILCは世界で最も洗練された科学計画の一つです。 ILCの実現には真の国際協力が必要となります。

リニアコライダー・コラボレーションはILCおよびCLIC加速器計画に携わる世界の研究者で構成される組織です。 ディレクターは前LHCプロジェクト・ディレクターのリン・エバンスであり、世界の加速器および測定器の開発研究を取りまとめています。  

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本件に関する連絡先

  • ILCコミュニケーター(communicators@linearcollider.org)
  • 高橋 理佳、KEK、日本、+81-29-879-6291, rika.takahashi@kek.jp

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