コバルト酸化物でスピンの量子重ね合わせ状態を創出 -量子演算素子の基礎となる励起子絶縁状態の実現へ-

 
  • 東北大学大学院理学研究科
  • 東京理科大学
  • 茨城大学
  • 東北大学金属材料研究所
  • 高エネルギー加速器研究機構
  • 日本原子力研究開発機構
  • J-PARCセンター
  • 総合科学研究機構

概要

東北大学大学院理学研究科の富安啓輔助教、東京理科大学理工学部の岡崎竜二准教授、茨城大学フロンティア応用原子科学研究センターの岩佐和晃教授、東北大学金属材料研究所の野島勉准教授、高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所の神山崇教授、石川喜久研究員(現:総合科学研究機構)、日本原子力研究開発機構J-PARCセンターの河村聖子研究副主幹らの共同研究チームは、低温で磁石としての性質を示さないことで知られるコバルト酸化物LaCoO3のCoをScで化学置換した新たな物質LaCo1-yScyO3において、元のLaCoO3とは磁気・電気・熱的性質の全く異なる絶縁状態が現れることを発見しました。

また、X線回折・中性子分光実験の結果、この絶縁状態が、電子スピンの総和が異なる2種類の原子状態(低スピンと高スピン)の量子力学的な重ね合わせにより現れるという、これまでに例のない発現機構を突き止めました。この成果は、励起子絶縁と呼ばれる歴史的に観測例の少ない量子力学的な凝縮状態の糸口をつかんだものとして、その実現だけでなく、将来的な新規量子コンピュータ素子への発展が期待されます。

本研究の成果は、平成30年10月7日(中央ヨーロッパ時間)、ドイツの国際科学論文誌Advanced Quantum Technologiesに掲載され、実験データが表紙を飾りました。

研究成果のポイント

  • ◇コバルト酸化物の組成制御により新しいタイプの半導体を発見。
  • ◇絶縁状態と磁気膨張の起源を、スピン状態の量子重ね合わせ機構により説明することに成功。
  • ◇この物質系を原型とした、電気を流さない省エネ型量子コンピュータの基本素子となりうる励起子絶縁状態の実現に期待。

詳しくは プレスリリース をご参照ください。

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