「国際リニアコライダー計画の見直し案に関する所見」について

 
平成30年12月19日
高エネルギー加速器研究機構

まずはじめに、日本学術会議「国際リニアコライダー計画の見直し案に関する検討委員会」による迅速にして詳細にわたる評価に心より感謝いたします。 この度、日本学術会議の最終回答が公表されたのを受け、ここに我々の見解を述べます。

日本学術会議において、「標準模型を超える新物理」追究というILC計画の学術的意義が評価された一方で、ILC計画の日本誘致実現に向けて、特に国際プロジェクトとしての経費分担や国際的推進体制についての課題も指摘されました。 これらの課題を解決するためにも、日本政府におかれましては、ILCの実現に向けた国際協議の実施について前向きな立場を早期に示していただけるようお願いいたします。

人類はこれまで加速器を使った研究などによって極微の世界を明らかにしてきました。 しかし自然界にはいまだに解明できずにいる大きな謎が残っており、それらを解明することが現代物理学の最大の課題となっています。 その鍵を握るのがヒッグス粒子であることは世界の素粒子物理学者の中で幅広いコンセンサスを得ており、その詳細研究により、人類の自然理解の地平が一気に拡がる可能性を秘めています。 リニアコライダーはこれからの50年、100年先までの「物理学の方向性」を決める一大転機となり得る重要な計画です。

ILCの物理の意義については広く共有されている所ですが、日本がILC計画の主要な部分を担うことの意義や是非については、学術的側面だけでなく、様々な社会的側面から議論されるべきものです。 これまでの研究者による検討を超えて、次は政府による国際協議を実施することが必要な段階にあります。協議の進行の中で、国際的、国内的条件が満たされないことが明確となった場合には、計画は中止されることになります。 予算を含めた世界のコンセンサスを得て、広く学界、社会から支持されるよう、ILC計画を進めていく所存です。

指摘された技術的課題については、世界が協力し、リソースを集中して、その解決に臨んでおります。これまでの、LHC、KEKB、European XFEL などにおける経験、実績から、充分解決できると確信しております。

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