筋ジストロフィー症に関わる糖鎖を合成する仕組みを解明

 
  • 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター
  • 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構

概要

東京都健康長寿医療センターの遠藤玉夫シニアフェロー、萬谷博研究副部長、今江理恵子研究員、高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所の加藤龍一准教授、桑原直之研究員(研究当時)らの共同研究グループは、先天性筋ジストロフィー症の原因遺伝子FKRPによる糖鎖合成機構を解明し、筋ジストロフィー症の新たな発症メカニズムを明らかにしました。この研究成果は、今後の病態解明や治療法の開発に大きく貢献するものと期待されます。

今回、X線結晶構造解析によりFKRPの立体構造の解明に成功し、FKRPがリビトールリン酸をつなげて糖鎖を伸ばす仕組みを明らかにしました。FKRPは機能未知だった部分(幹領域)と酵素活性を担う部分(触媒領域)で構成されますが、1分子で単独で存在するのではなく、FKRPが4つ集合した「4量体」という状態で存在し、2つのFKRPのそれぞれの幹領域と触媒領域を使って糖鎖を両端から挟み込むように捕まえることが分かりました。FKRPと糖鎖の結合にはリン酸というこの糖鎖に特徴的な構造が必要でした。さらに、筋ジストロフィー症患者から見つかったいくつかの変異FKRPは、4量体を作ることができず、酵素活性が著しく低下していました。これらの結果から、FKRPが複数で集まって存在することは、FKRPが糖鎖を捕まえるために必須であることが分かりました。同じ酵素2つが協調して糖鎖を捕まえるという方式も、糖鎖を合成する仕組みとして初めての発見であり、ユニークなリビトールリン酸構造を形成する基盤であることが明らかになりました。

本研究は、Nature Publishing Group発行のオンライン国際科学雑誌「Nature Communications」に1月16日に掲載されました。

詳しくは プレスリリース をご参照ください。

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