乳癌における乳頭温存乳腺全摘術のリスク低減へ! - CTで乳頭内乳管の可視化に成功 -

 
乳頭の染色された組織切片(左)とX線暗視野CT(右)
  • 名古屋大学
  • 高エネルギ-加速器研究機構

概要

名古屋大学大学院医学系研究科の砂口 尚輝 准教授、北海道科学大学保健医療学部 島雄 大介 教授、名古屋医療センター臨床研究センター 市原 周 元研究室長らのグループは、乳癌が基本的に1つの乳腺葉を侵す疾患であること(sick lobe理論)を、乳癌により全摘された51症例の乳頭をX線暗視野CTにより可視化することで明らかにしました。

近年、乳癌の予防あるいは治療後の外観を維持するために、乳房の乳頭・乳輪・皮膚を残して、乳腺を切除する乳頭温存乳腺全摘術が行われるようになりましたが、乳頭内乳管の3次元配置や乳頭内乳管癌の発生メカニズムについては、まだ完全に分かっておらず、少なからずリスクが存在します。 本研究では、乳頭内の乳管を高感度かつ3次元的に可視化できるX線暗視野法を用いて、乳癌のために全摘された51症例の乳頭を撮影し、乳頭内乳管数、乳頭先端における乳管の合流点(開口)数、乳頭内乳管の3次元配置における3つのタイプを明らかにしました。また、9症例(18%)で乳頭内に癌が発見されましたが、そのうち6症例で見つかった乳頭内の非浸潤性乳管癌についてスウェーデンの病理学者Tibor Totが提唱したsick lobe理論どおり、乳癌が1つの乳腺葉で発生したことをCTの3次元観察により明らかにしました。

この研究成果は、令和2年2月15日付け、オランダ誌Breast Cancer Research and Treatmentに掲載されました。

研究成果のポイント

  • ◆X線暗視野CTは染色した組織切片に匹敵する組織コントラストで画像を提供できるため、微細解剖学分野の研究に貢献できる。
  • ◆ヒト乳頭51症例の解析により、乳頭内乳管数、乳頭先端における乳管の合流点(開口)数、乳頭内乳管の3次元配置が3つのタイプに分類できることを明らかにした。
  • ◆51症例中9症例で乳頭内に乳癌が存在し、うち6症例の非浸潤性乳管癌についてTibor Totのsick lobe理論を支持する結果を得た。

詳しくは プレスリリース をご参照ください。

TOP