遷移元素を含む物質の「隠れた秩序」の観測に成功-重い元素の示す奇妙な振る舞いの理解に向けて-
#プレスリリース #物構研- 東京大学
- 高エネルギ-加速器研究機構
- 理化学研究所
概要
東京大学物性研究所の平井大悟郎助教、廣井善二教授、高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所の佐賀山基准教授、理化学研究所創発物性科学研究センターのGao Shang研究員、放射光科学研究センターの大隅寛幸専任研究員、東京大学大学院新領域創成科学研究科の有馬孝尚教授(理化学研究所創発物性科学研究センターチームリーダー)らの研究グループは中国のグループと協力して、遷移元素を含む物質の中に出現することが予測されていた多極子の秩序を世界で初めて観測しました。
白金などの原子番号の大きな遷移元素の中では、相対論的効果によって電子は特殊な性質を示すことが近年認識されるようになってきました。多極子の秩序は、この特殊な性質によって現れる特徴的な現象として予測されていました。しかし、これまでは多極子の観測に適した研究対象物質が見つかっていなかったこと、および、その観測が難しいことから、明確な実験的証拠が得られていませんでした。
本研究では、レニウムという重い遷移元素を含む物質に目を付け、純良な結晶に放射光X線を照射することで、原子の位置を1兆分の1メートル(1ピコメートル)という超高精度で測定しました。その結果、予測されていたクローバー型の多極子の整列を観測することに成功、加えて予測されていなかったダンベル型の多極子の整列を発見しました。原子番号の大きな遷移元素中の電子の特殊な性質は、スピントロニクスなどの分野で利用されています。本研究によってこの性質の理解が深まると、よりよい材料の設計指針を立てたり、新しい動作原理を提案したりすることが可能になると期待されます。
本研究成果は、米国物理学会学術誌「Physical Review Research」の2020年6月5日付けオンライン版に速報記事として公開される予定です。
研究成果のポイント
- 重い遷移元素レニウムを含む物質において、放射光X線を用いた高精度の測定により、「隠れた秩序」として知られる多極子の整列パターンを世界で初めて観測することに成功しました。
- 多極子の整列パターンは、理論予測通りの整列と、予測されていなかった新たな整列の2種類あることを発見、より複雑なものであることを明らかにしました。
- 多極子の整列パターンを説明する理論を精密化することで、原子番号の大きな遷移元素の特殊な性質の理解が進みます。スピントロニクスなどの分野で、動作原理の理解や素子の高効率化などに寄与すると考えられます。
詳しくは プレスリリース をご参照ください。
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