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2025.6.20


QUPの主任研究者Takhistov特任准教授が、2025年 素粒子メダル奨励賞:素粒子理論物理学分野の若手研究者賞を受賞。

ウォロディミル・タキストフ氏

量子場計測システム国際拠点(WPI-QUP)の主任研究者兼准教授であるVolodymyr Takhistov氏が、2025年(第20回)素粒子メダル奨励賞:素粒子理論物理学分野の若手研究者賞を受賞しました。

受賞対象となった論文は、2018年のTakhistov氏のPhysics Letters B への論文「原始ブラックホールからの変換された重力波信号」で、重力波観測を用いて暗黒物質のシナリオを調査する新たなアプローチを提案しました。「この研究は、理論的予測と観測を結びつけることの重要性を強調しており、ここでは暗黒物質の性質を探る上で、従来のアイデアをとび超えたアイデアが必要であることを示しています。この栄誉を授与いただき光栄です。」とTakhistovは喜びを伝えています。

審査員は次のように講評しています。「本論文は、暗黒物質の有力候補である原始ブラックホール(pBH)の検証に向けた新しい観測手法を提案したものであり、その着想と波及効果の観点から極めて高く評価される。著者は、pBHが中性子星(NS)や白色矮星(WD)に捕獲されることで“変異ブラックホール(transmuted BH)”が形成される可能性に着目し、これらが連星を組んで合体する際に放出される重力波をLIGOやVirgoといった地上望遠鏡で観測することで、pBHの存在を間接的に捉えるという独創的な方法を提案した。恒星起源のブラックホールは太陽質量の約2倍以下にはならないとされる一方、NSやWDを起源とする変異BHは亜太陽質量領域に至る可能性があり、質量の違いを通じて両者を区別できる余地がある。本論文は、pBHという検証が極めて困難な暗黒物質候補に対して、観測的に検証可能な新しい道筋を開いた先駆的研究であり、今後の重力波天文学との連携による進展が強く期待される。以上の理由から、本論文は素粒子メダル奨励賞に相応しい成果と評価された。」

この受賞は、QUPの学際的なミッションである「科学の様々な分野を結びつけ、宇宙の根本的な法則を探求する」という理念とも密接に繋がっています。この賞に関連して、Takhistov氏は、QUPのインターンシッププログラム(QUPIP)に参加したソウル国立大学のDr. Philip Lu とDr. HanGil Choi と協力し、暗黒物質がブラックホールと微小粒子から構成される可能性のあるシナリオを検証する新たな手法を提案しました。この研究結果は、2024年のPhysical Review Lettersに掲載されQUPからプレスリリースしました。

このような取り組みは、重力波を含む多様なメッセンジャーを活用して新たな物理学を解明するQUPの広範な戦略を反映しています。、QUPの実験プログラムでは、最先端の量子センシング技術の開発を通じて、重力と重力波検出の研究に新たなアプローチを推進しています。

授賞式は、2025年9月16日から19日まで広島大学で開催される日本物理学会第80回年次総会において行われます。

関連リンク:
QUP ニュース|ミクロとマクロの世界を統合した視点からダークマターを解き明かす
https://www2.kek.jp/qup/news/detail20240920.html

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