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量子デコヒーレンスを古典運動方程式の複素数解から再現
—西村淳 教授らの研究論文がPhysical Review Letters誌に掲載されました。
KEK理論センターの西村淳 教授らは、量子力学に特有な量子デコヒーレンス現象を、古典運動方程式の複素数解から再現できることを指摘し、これに基づいて行った数値計算と共に、その成果がPhysical Review Letters 誌に2025年5月27日(米国東部時間)、掲載されました。
https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.134.210401
論文はプレプリント版で閲覧できます。
https://arxiv.org/pdf/2408.16627
量子力学において特徴的な状態として、シュレディンガーの猫のように、複数の異なる状態の「重ね合わせ」で表されるような状態が存在します。ところが、いま注目している系に影響を及ぼすような環境が周囲にある場合、こうした状態は短い時間で壊れてしまい、複数の異なる状態が一定の確率で存在しうるというだけの、古典論的な状況に遷移することが知られています。これが「量子デコヒーレンス」と呼ばれる現象です。本研究ではこの現象が、古典運動方程式の複素数解から再現できることが初めて指摘されました。(一般に複素数とは、二乗すると負の実数になる仮想的な数を、通常の実数に足し合わせた数を表します。)特に、量子デコヒーレンスの簡単な模型では、従来の方法とは異なり、近似や仮定なしに正確な数値計算が行われました。近年、量子コンピューターなどの量子技術の進展と共に、量子デコヒーレンスを理解し、その効果を正確に評価することの重要性は益々高まっています。本研究は、これを実現するための新しい強力な理論的枠組みを提供するものと言えます。この研究は、慶應大 日吉物理学教室 自然科学研究教育センター研究員である渡辺展正氏との共同研究に基づきます。