セミナー 2025年

seminar2025

[金茶会] 超高精度「原子核時計」で探る基礎物理

  • SPEAKER 吉村浩司, 岡山大学異分野基礎科学研究所
  • PLACE 4号館セミナーホール リモート会場:JRB 2階大会議室, 仁科記念棟210室
https://www-conf.kek.jp/kincha/
トリウムの同位体であるトリウム229は、原子核として極めて特異な約8 eVという非常に低いエネルギーの励起準位(アイソマー準位)を持ち、レーザー光による直接的な励起が可能な唯一の原子核として注目を集めている。原子核は外部場の影響をほとんど受けないため、極めて安定した量子状態を実現することが可能である。もしレーザーを用いた原子核の制御が可能となれば、従来の原子時計を凌駕する精度を持つ「原子核時計」の実現へと繋がり、その波及効果は基礎物理学の革新に留まらず、産業や社会に多大な恩恵をもたらすと期待されている。トリウム229の特異性は1970年代から科学者の注目を集め、研究が進められてきたが、その詳細な特性は長らく謎に包まれていた。しかし、2016年にドイツの研究グループがアイソマー準位からの電子放出遷移を初めて観測したことで、この分野の研究は飛躍的な進展を遂げて、2024年には大きなマイルストーンとして、レーザーによるトリウム229の励起がついに実現した。この成果を受け、今後、世界各国で原子核時計の開発競争が本格化すると予想される。本講演では、こうした最近の原子核時計研究の進展について概観し、基礎物理学への応用や、その発展がもたらす科学的・技術的な可能性について展望する。


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