セミナー 2010年

井元信之, 大阪大学大学院基礎工学研究科

量子測定の意外な側面

Room 345, 4 go-kan
量子力学は、測定されなければユニタリー発展、測定されればノイマンの射影という2本立ての法則から成る。射影をもたらす測定は「強い測定」であるが、被測定系と測定器を弱く相互作用させることにより、射影の度合いも弱い「弱い測定」が可能である。強い測定も弱い測定も単なる計測にとどまらない意外な効用あるいは性質があり、最近理論のみならず実験研究も進んでいる。たとえば量子もつれ(エンタングルメント)と強い測定を組み合わせると興味深い「測定誘起型量子演算」ができるが、これは4光子系で実験が行われている。一方弱い測定を用いると、量子干渉を妨げず干渉計の中の粒子の経路の「期待値」が知れることが最近わかって来た。さらに特殊な干渉計ではそれが負という異常な値が出ることが予想され、それも実証された。そのようなことが起こる一般的条件はまだ分かり切ってはいない。講演ではこれらの研究を解説するが、準備も兼ねて量子もつれおよび量子テレポーテーションから紹介する。

坪田誠, 大阪市立大学

量子乱流-- Another Da Vinci code --

Room 345, 4 go-kan
約500年前のルネッサンス期、レオナルド・ダ・ヴィンチは乱流のスケッチを描き、 「乱流は単なる乱れた状態ではなく、渦から成る構造を持つ」(Another Da Vinci code)という重要なメッセージを残した。それ以降、乱流については、基礎科学から 応用科学に至る広範な分野で膨大な研究が行われて来た。しかし、乱流は非常に 複雑で、強い非線形性を持つ非平衡の動的現象であり、十分な解明がなされたとは 言えない。「Another Da Vinci code」が乱流を解く鍵を与えるかも知れないが、 通常流体では渦は安定でなく、その同定すら容易でない。ところが、近年、 「Another Da Vinci code」は、超流動ヘリウムや中性原子気体 ボース・アインシュタイン凝縮体(BEC)といった極低温の量子流体が作る 量子乱流(Quantum turbulence)のなかにこそ具現化していることが明らかに なって来た。本講演では、このような最新の量子流体力学研究について紹介する。


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