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コンパクトERL入射部にて電子ビームの加速に成功

物構研トピックス
2013年5月29日

次世代放射光源として期待されているERL(エネルギー回収型ライナック)の実証器(コンパクトERL)にて、光陰極DC電子銃から発生した 電子ビームを、入射器超伝導加速空洞*で光速近く(5 MeV)まで加速することに成功しました。

電子発生および加速の概要
レーザー照射によってターゲットから出た電子は、390 kVの電圧により光速の82%まで加速される。その後、入射器超伝導加速空洞によりほぼ光速まで加速される。

ERLはこれまでの蓄積リング型放射光を凌駕する高輝度性、短パルス性をもつ放射光を生み出す次世代放射光源です。この実現のため、KEKは日本原子力研究開発機構、東京大学物性研究所、分子科学研究所(UVSOR)、広島大学、名古屋大学等と共同研究、技術開発を行ってきました。
本光陰極DC電子銃は、KEK、日本原子力研究開発機構、広島大学、名古屋大学により共同開発したもので、2009年に独自の多段セラミック管を用いた500 kV電圧印加に成功、 その後500 keVの大電流ビームの生成にも成功しました。 今回は、入射器超伝導加速空洞を導入し、光速までの加速に成功したものです。本成果は、ERL型次世代放射光源の実現を可能とする第一歩と位置付けられます。

ERL 開発棟でのcERL ビーム調整の様子

コンパクトERLに組み込まれた電子銃にて、4月末に390 keVの電子ビームを引き出すことに成功、その後電子ビームを入射器超伝導加速空洞に導き、加速テストを実施してきました。 ビーム強度、位相、位置等の調整を経て、ほぼ光速である5 MeVまで加速することに成功し、原子力規制庁の指定登録機関である原子力安全技術センターの施設検査を5月27日に合格しました。 今後はエミッタンス(ビームの広がり)やビームの安定化の調整を本格的に開始します。そして夏のシャットダウンで周回部を建設し、秋からERL運転(ビームの周回運転)を目指します。


◆用語解説

  • * 入射器超伝導加速空洞
    ニオブ等の超伝導材料でつくられた空洞にマイクロ波を送り込んで電場をつくり、電子や陽電子のビームを連続的に加速する装置。次世代放射光源として期待される大電流電子ビームを実現するために必須な構成要素。

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