6月13日から22日まで、トルコのトゥルンクにて、中東地域の放射光科学者を養成するSESAMEスクール※1が第2回Henry Moseley X-ray School※2と合同で開催され、80名以上の応募者の中から選ばれた35名が参加者しました。
SESAME (Synchrotron-light for Experimental Science and Applications in the Middle East)はヨルダンの首都アンマンに建設中の放射光施設で、 2014年からの利用開始を目指しています。SESAMEスクールは、完成後にSESAMEを利用した研究を担う中東地域の研究者を養成するために開催、今回で5回目となります。
スクールは21コマの講義と2日間にわたる実習からなり、放射光科学先進国の1つとして参加した日本の講師陣は、7コマの講義を担当したほか、実習を全面的に行い、KEKからは5名の講師が派遣されました。 放射光ハンズオン実習は、放射光測定で得られた実験データを元に、解析法の習得を目的としたもので、光電子分光法、X線吸収分光法、タンパク質結晶構造解析法、粉末X線回折法、蛍光X線分析法 の5つの手法について行われました。
実習初日は、各測定法の実習グループに別れて測定法の原理に関する講義と、データ解析法の実習が行われました。参加者は主に学部・大学院の学生でしたが、大部分の参加者が非常に積極的に取り組んでいました。 2日目には、データ解析結果をまとめて、プレゼンテーションを作成し、参加者全員の前でグループ毎に実習内容の発表が行われました。短時間の実習にもかかわらず、各グループとも堂々と発表と質疑応答を行っていました。
SESAME支援のスクールは、他にもいくつか行われていますが、このようなハンズオン実習は例がなく、SESAME側から大変高い評価を受けており、今後の継続を希望する声が多く寄せられました。 今後のSESAMEの利用開始に向けて、様々な放射光利用分野において、SESAME地域での放射光利用者コミュニティの形成を目指した取り組みが、今後ますます重要となっていきます。
補足
※1 SESAMEプロジェクト:
放射光施設SESAMEの建設プロジェクトには、イスラエル、パレスティナ自治区、バーレーン、エジプト、ヨルダン、パキスタン、トルコ、イラン、キプロスといった中東地域の9か国・地域が参加しており、 科学研究を基盤とした中東各国・地域の相互協力プロジェクトという極めてユニークな取り組みとしてUNESCOの管轄のもと推進されている。 日本は2000年の計画当初からサポートを行っており、2009年にはSESAME理事会のオブザーバーとなった。特に、2007-2009年度および2011-2013年度には日本学術振興会の アジア・アフリカ学術基盤形成事業のサポートを受け、エジプト・カイロ(2008年11月)、トルコ・アンタリア(2010年3月)、ヨルダン・アンマン(2011年10月)で日本人放射光研究者による放射光スクールを開催してきた。
※2 Henry Moseley X-ray School:
トルコで開催されているX線を利用した科学のためのスクール。トルコのInstitute for Theoretical and Applied Physics (ITAP)の主催で、昨年から始まった。