12月9日、物構研コロキウムとして、京都大学大学院理学研究科・化学専攻の北川宏教授による「元素間融合を基軸とする新物質創成と機能性材料開発」と題した講演が行われました。
原子が数個から数10個程度のナノメートルサイズでは、私たちのよく知る物質の性質とは異なる性質を示すことが知られています。 「もともと化学専攻だったのですが、物理に憧れて固体物理を始めたところ、『もの』がないと物理が進まないことに気づきました」と、 ものづくりの重要性を語った北川教授は、ナノサイズにすることによって、室温付近での高いイオン伝導度や、高い触媒活性などを次々と実現させてきました。 なかでも、これまで「混ざらない」とされてきた元素のペアを、ナノサイズにすることで原子レベルで一様に混ぜることに成功し、2種類の元素の中間の原子番号の元素の性質を出すという「 元素融合」には、多くの聴衆の関心が集まりました。「元素融合」でできた新物質は、単に中間の元素の模擬だけではなく、それを超える性質を出す可能性があり、 水素吸蔵物質などの機能性材料の創成という点ではもちろんのこと、物性物理学としてもこれまでの概念を超えるインパクトがあります。 講演では、混ざらない元素のペアを混ぜる事に諦めそうになった学生を叱咤激励してようやく混ぜることに成功した話などの臨場感あふれるエピソードを交えながら、 未来につながるワクワクするようなお話を聞かせていただきました。
物構研では、定期的に「物構研コロキウム」を開催しています。このコロキウムは、物構研のスタッフが、研究の視野を広げ、 所内のアクティビティの情報を共有し、異なる研究プローブの協奏的利用について議論し、考える機会のひとつとして位置付けられています。 外部の著名な研究者をお呼びして、貴重なご講演をいただくこともそのひとつのテーマとなっています。
次回は2014年1月31日(金) 15時から、NHK解説委員室の室山哲也さんをお招きして「テレビで学んだ?上手な情報の伝え方」と題する講演が予定されています。