照井 真司氏、片桐 広明氏がKEK技術賞を受賞

加速器第三研究系技師 照井 真司 氏の「SuperKEKB用ビームコリメータの開発」と同第五研究系技師 片桐 広明 氏の「電子・陽電子入射器用RFモニタの開発」が令和元年度KEK技術賞を受賞し、2月7日に表彰式と受賞発表会が開催されました。
受賞対象として高い評価を得た両氏の装置開発は、いずれもSuperKEKBプロジェクトで欠かすことのできない主要な技術と装置を構築し、加速器の高性能化に大きな貢献を果たしています。

SuperKEKB用ビームコリメータの開発

SuperKEKB加速器には周長が約3 kmの7 GeV電子用リング(HER)と4 GeV陽電子用リング(LER)からなる主リング(MR)があります。ここにはビームコリメータと呼ばれるビーム軌道近くのビームハローを削る装置があり、素粒子検出器(BelleⅡ)のバックグラウンドを低減したり各種加速器コンポーネントを周回ビームから防護したりしています。
照井氏はBelleⅡ実験に不可欠なこのビームコリメータの設計、開発、製作、設置を一貫して担当しています。SuperKEKBでは周回するビーム電流が大きく、バンチ長が5-6 mmと非常に短いため、発生する強力な高次高周波への対策が重要であり、材質の検討、製作方法、熱計算、インピーダンス計算など様々な技術的検討が必要になります。照井氏は自らが中心となって文献調査や専門家との議論を重ねこうした課題を着実にこなし、製作、設置を経てビーム試験では十分な性能を有することを実証しました。こうしてSuperKEKBの要求する高い仕様のビームコリメータを実現させたことは高く評価されました。現在、開発したビームコリメータ14台がMRに設置されており、安定した運転に供しています。また、設置後に浮上したヘッドの損傷、高次高周波による発熱などの諸問題に対しても改善のため日々努力を続けています。

ビームコリメータ

電子・陽電子入射器用RFモニタの開発

電子陽電子入射器はSuperKEKB-HER(7 GeV、電子)、同LER(4 GeV、陽電子)、PF(2.5 GeV、電子)、PF-AR(6.5 GeV / 5 GeV、電子)の4つの蓄積リングにエネルギーや電荷量の異なる高品質のビームを安定して入射する役割を持つ加速器です。各リングで高精度な実験・測定を行うため蓄積電流を一定に保つ必要性が高まり、入射器では繰り返し50 Hzのパルス毎にビームを振り分ける4リング同時トップアップ入射の実現とその完成度を高めるためのアップグレードを進めてきました。
その中で片桐氏が新規に設計・開発したRFモニタは、50 Hzのパルス毎にクライストロンやパルス圧縮器の進行波・反射波、加速管のピックアップ信号等のRF波形データを広いダイナミックレンジを確保しつつ、振幅0.1 % (rms)、位相0.1 deg (rms)の精度で高速に取得することを可能にし、更にイベントタイミングシステムから直接情報を受信するためのイベントレシーバをFPGAに搭載することで波形データにモードやショットIDのタグ付けを可能にしたものです。各ビーム入射時のパルス毎のRF状態を詳細に把握できる本モニタは、RF機器の健全性の診断やインターロック作動時の波形の保存、冷却水温による加速位相の変動監視等に役立っており、広く評価されると共に、ビーム誘起波の測定に応用することでビーム診断のツールとしても非常に期待されています。

RFモニタ(外観) RFモニタ(内部) 波形データの表示例


山内 正則KEK機構長(前列中央)と受賞者
受賞者:照井 真司氏(向かって左側)、片桐 広明氏(向かって右側)

〜 文責 : 加速器第三研究系 丸塚 勝美・加速器第五研究系 柿原 和久〜

(Highlightsリンク掲載 2020.2.18)

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