横谷 馨名誉教授・ダイヤモンドフェローが2024年ロバート・R・ウィルソン賞を受賞
米国物理学会(APS)・2024年ロバート・R・ウィルソン賞(Robert R. Wilson Prize)が、KEKダイヤモンドフェローで加速器研究施設の横谷 馨(よこや かおる)名誉教授に授与されることが発表されました。この賞は加速器物理における特に顕著な国際的貢献を表彰するものです。今回の受賞理由には「電子蓄積リングにおける理論と偏極の制御、リニアコライダーにおけるビーム・ビーム相互作用の研究、そして円形加速器におけるクラブ交差衝突およびコヒーレントビーム・ビーム相互作用に関する研究への多大な貢献」が挙げられています。
横谷氏は、1979年KEKに着任し、加速器理論・加速器物理の立場から、TRISTAN加速器の設計および実現に貢献しました。特に電子・陽電子円形衝突型加速器におけるビーム不安定性に関わる理論的な研究、電子蓄積リングにおけるビーム偏極の重要性に着目した研究に取り組み、TRISTAN加速器の実現に向けた加速器理論研究の中核となり計画を推進しました。1984年からは、更なるエネルギーフロンティアを目指した将来計画となるリニアコライダー加速器の基本設計において理論グループをリードし、初期のJapan Linear Collider(JLC)計画から現在のInternational Linear Collider(ILC)に至るまで、リニアコライダー設計を推進する中心的役割を果たし続けてきました。この間、設計の要となるビーム・ビーム相互作用評価に焦点を当てた計算機シミュレーションコード「CAIN」を開発し、衝突する電子、陽電子、高エネルギー光子ビームとレーザー光子ビームの両方の間で起こり得る相互作用の研究を深めました。さらに、円形衝突型加速器におけるビーム衝突によるチューンシフトの解析的研究、クラブ交差衝突の研究にも大いに貢献しています。これらの長年にわたる究成果への国際的な高い評価が、今回のWilson Prize受賞の背景となっています。
横谷氏は、2005年以降、ILC国際設計チーム(Global Design Effort: GDE)に主要メンバーとして参加し、国際共同加速器設計の中核となる役割を果たすとともに、2006〜2010年にはKEKリニアコライダー推進室長を務め、国際協力によるリニアコライダー推進の要となってきました。2013年以降は、Linear Collider Collaboration (LCC), ILC国際開発チーム(ILC-IDT)のシニアメンバーとしてILC実現に向けて貢献を続けています。横谷氏は、高エネルギー加速器および物理実験分野において国際的に深い信頼を寄せられており、将来計画の実現に向け取り組み続けています。横谷氏は、 1990年に仁科記念賞を受賞し、2015年に加速器科学技術分野の功績に対して USPAS賞を受賞しています。ロバート R. ウィルソン賞の授賞式と受賞講演は、2024年米国物理学会(4月開催)にて予定されています。