佐々木 信哉氏がKEK技術賞を受賞


山内 正則KEK機構長(前列中央)と受賞者の佐々木 信哉准技師(左隣)

加速器研究施設・加速器第四研究系准技師 佐々木 信哉氏の「Archiver Appliance データの可視のためのGrafana プラグインの開発」が、令和3年度KEK技術賞を受賞し、2月10日に表彰式と受賞発表会が開催されました。受賞対象として高い評価を得た氏の業績は、KEKのプロジェクトで欠かすことのできない主要な技術であり、加速器の高性能化に大きな貢献を果たしています。

Archiver Appliance データの可視のためのGrafana プラグインの開発
佐々木 信哉准技師

加速器研究施設で用いられている制御システムのEPICS 環境下でArchiver Applianceというシステムに加速器の運転データを記録しています。そのようなArchiver Appliance データ(AAデータ)を可視化するツールは既にいくつか存在しますが、WEB 上でプログラミング無しで利用できるものは汎用的な単純表示をするものばかりであり、監視画面等で必要とされる複雑な関数等を組み込んだ特定用途に対応したものはこれまでありませんでした。佐々木氏はGrafana というネットワークや計算機リソースの監視に用いられているグラフィックツールに目を付け、データの変換等を用いることなくAA データを直接的に取り扱うことができるようGrafana プラグインの開発を行いました。プラグインにFunction というデータの後処理機能を予め実装することで、記録されたデータを加工することが可能になっています。またグラフィックツールであるため多彩な表示が可能で、これまでの味気ない表示に比べとても見栄えの良い監視画面をユーザーが自由に作成できます。既にSuperKEKB やcERL、PF といったKEK 内の各研究施設で使用されるだけでなくSLAC のLCLS でも利用されるなど国内外の加速器研究施設で使用されており、出来栄えの良さからも今後広まっていくものと期待されます。


図1:プラグインのデータ入力画面


図2:cERLにおける照射実験のパラメータ表示での利用


図3:Web上に公開されているプラグインの利用方法を記した文書

(インタビュー)
「苦労したことは?」

Grafanaのプラグイン開発の情報が少なかったため開発に苦労しました。そのため、既存のプラグインのソースコードを解読しながら開発を進めていきました。また、Grafanaのバージョンが上がると推奨される開発手法やプログラムの書き方が変更されることもあり、常に最新のバージョンで動くようにプログラムを変更することにも苦労しました。海外の研究施設でも利用できるように英語のマニュアルを整備したことも手間がかかりました。

「受賞して思ったことは?」
開発から2年と日が浅く利用実績を伸ばしている段階で本プラグインを評価して頂き、このような賞を頂けたのは嬉しく思います。今回このような賞を頂けたのは、現状の成果を評価されたからということ以上に、今後の機能向上や普及を期待されているからだと考えています。そのため、プラグインをより多くの人が利用できるように、ユーザーの声を取り入れながら開発を継続し、環境整備や普及活動に努めたいと思います。

「将来の抱負は?」
加速器制御のためのソフトウェアはオープンソースとして公開し、世界中の施設と互いに協力しながら開発や利用を行うことも少なくありません。本プラグインもWeb上に公開したことでSLACでも利用され、機能の一部を互いに協力して開発しました。この経験を活かして、今後もそのようなソフトウェアの開発に積極的に関与して、加速器制御コミュニティの発展に貢献していきたいと思います。

〜 文責: 加速器第四研究系 有永 三洋〜