重い電子系超伝導体CeCu2Si2の磁性と超伝導の共存
magnetism2_1セリウム化合物CeCu2Si2は1970年代に発見された最初の重い電子系超伝導体であり、長年に渡って様々な手段による研究が行なわれていますが未だに謎の多い物質です。特に組成のわずかな変化で現れ,超伝導と隣接している磁気的な相(A相と呼ばれる)は中性子回折や核磁気共鳴でもその正体が分からず,超伝導との関係も含め様々な憶測を呼んでいました。最近このA相でのミュオンのナイトシフトの精密測定が行われ,下左図のようにA相の磁気モーメントによるシフトが超伝導の発達に伴って減少していくことが明らかになりました(図中矢印はA相からの信号,超伝導転移温度は約0.6K)。

測定試料では磁化率測定等から超伝導も発現していることが確かめられていますが、ナイトシフトを温度に対してプロットすると右図(a)のようにその転移温度付近(~1Kをやや下回る温度)から低温に向かってシフトが減少していく様子が分かります。これはA相の磁性を担うf電子が遍歴電子として超伝導をも担い,クーパー対の形成にともなってナイトシフトが減少したと解釈でき,A相において磁性と超伝導が文字どおり微視的に共存している証拠と考えられています(Koda et al., 2002)。

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