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七夕講演会「宇宙のはじまりは大いそがし!? -宇宙の誕生とブラックホールのおはなし-」を開催

2021年7月10日(土)に、つくばエキスポセンターと高エネルギー加速器研究機構(KEK)が主催で、七夕講演会「宇宙のはじまりは大いそがし!? -宇宙の誕生とブラックホールのおはなし-」を開催しました。

本講演会はKEKと公益財団法人つくば科学万博記念財団(つくばエキスポセンター)の主催イベントで、全国同時七夕講演会2021に登録しています。全国同時七夕講演会とは、七夕の前後の期間に全国各地の科学館や研究機関などで天文・宇宙関連の講演会を行う、日本天文学会主催のイベントです。今回はKEKとつくばエキスポセンター主催の講演会では初となる、対面形式とオンライン形式の同時開催でした。対面形式は定員を20名に限定し、換気や参加者のマスク着用など感染対策を徹底した上で実施し、会場で15名、オンラインで39組が参加しました。

今回の七夕講演会では、理論センターの郡和範 准教授とKEK CMBグループの長谷川雅也 講師の2名の研究者による講演が行われました。郡准教授の講演は「宇宙のはじまりと銀河中心の巨大ブラックホール」というタイトルで、2020年のノーベル物理学賞の研究解説も交えつつ、銀河の中心に存在する巨大ブラックホールの誕生や進化の過程などを解説しました。同時に、誕生から間もない頃の宇宙には光や物質などの密度のムラが存在し、特に原子と暗黒物質のムラが長い時間かけて集まり潰れることで銀河が誕生し、その中のガスや塵が潰れることで太陽などの恒星、地球などの惑星がつくられたという理論を説明しました。さらに、宇宙初期には特に濃いムラが瞬時に潰れることで、原始ブラックホールと呼ばれるブラックホールも誕生していたという理論研究も紹介しました。

郡准教授の講演は宇宙誕生についての理論研究の解説だった一方、長谷川講師は「CMBチャンネルで宇宙のはじまりをみる」というタイトルで、主に観測研究について解説しました。初めに、宇宙は誕生直後、火の玉のように熱い状態で小さかったものがインフレーション期を経てビッグバンで急激に膨張して現在の宇宙になったという理論を紹介しました。そして宇宙のはじまりが理論通り熱く小さな状態だったか調べるために、ビッグバンのなごりであるCMBチャンネルという電波を観測した研究について説明しました。さらに、KEK CMBグループをはじめとする世界8カ国から100名の研究者が参加する、チリでの地上観測実験ポーラーベア(POLARBEAR)と、13カ国から300名の研究者が参加するライトバード(LiteBIRD)衛星計画についても紹介しました。両計画では、CMBの偏光パターンの内、Bモードと呼ばれる渦模様を観測してインフレーション期に生成されたと考えられている重力波(原始重力波)を捉え、そこからインフレーションが起きた証拠を捉えることを目指しています。

講演の後は会場、オンラインそれぞれから多くの質問が寄せられました。宇宙の外側はどうなっているのかという質問があがると、郡准教授は「インフレーションが起こると、理論的には我々に見えている宇宙のずっと外側までも同じような世界が広がっていると考えられます。ですが、これはまだ推測の範囲なので、観測で証明しなければなりません。」と回答しました。なぜポーラーベア計画はチリで実験をするのかという質問に対しては、長谷川講師が「水蒸気があると観測映像が不鮮明になってしまいます。チリは空気が薄く乾燥していてCMB観測には最適な場所なので、チリで実験しています。」と説明しました。

参加者のアンケートからは、「宇宙のことをもっと知りたくなりました」、「最先端の研究がこんなにも進んでいる事を知り驚きました」といった感想が寄せられました。


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