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七夕講演会2022「カガクで発掘!宇宙の歴史」を開催

2022年7月10日(日)、つくばエキスポセンターと高エネルギー加速器研究機構(KEK)が主催で、七夕講演会2022「カガクで発掘!宇宙の歴史」を開催しました。本講演会はKEKと公益財団法人つくば科学万博記念財団(つくばエキスポセンター)毎年開催しているイベントで、全国同時七夕講演会2022に登録しています。全国同時七夕講演会とは、七夕の前後の期間に全国各地の科学館や研究機関などで天文・宇宙関連の講演会を行う、日本天文学会主催のイベントです。今回は昨年に引き続き、対面形式とオンライン形式の同時開催で、つくばエキスポセンターの会場で22名、オンラインで38組が参加しました。

 

今回の七夕講演会では、理論センターの松原隆彦 教授とKEK CMBグループの長谷川雅也 講師の2名の研究者による講演を行いました。前半は松原教授による「計算(理論)で探る宇宙の歴史」という講演でした。松原教授は、宇宙が誕生から終わりを迎えるまでの歴史の理論研究について、シミュレーション動画を上映しつつわかりやすく紹介しました。松原教授が解説した最新の理論によると、宇宙は最初、時間も空間もない「無」の状態から始まりましたが、微小な宇宙が量子トンネル効果という現象により出現しました。そして、高温高密の火の玉のような「ビッグバン」と呼ばれる状態から宇宙空間が急激に広がりました。その後、宇宙に星や銀河が誕生し、私たちの住む銀河(銀河系)や太陽系が誕生して現在の宇宙の姿になったと考えられています。松原教授はさらに、銀河系が将来、隣にあるアンドロメダ銀河と衝突し、やがて大きな一つの銀河に進化するシミュレーション動画を上映しながら、理論で予想する将来の宇宙の姿を説明しました。また、宇宙がどのようにして終わりを迎えるか、1. ビッグ・フリーズ:宇宙は永遠に広がり、やがて宇宙全体がほぼ真空になって終わる理論、2. ビッグ・リップ:宇宙が広がり過ぎた結果、宇宙全体が引き裂かれて終わる理論、3. ビッグ・クランチ:宇宙の膨張が止まり、小さくなって潰れて終わる理論という3つの可能性が考えられることを紹介しました。

 

後半は長谷川講師による「「宇宙の化石」でさぐる宇宙のはじまり」という、観測研究の最前線を紹介する講演でした。宇宙は誕生直後、本当に火の玉のようであったか調べるために、遠くの宇宙を観測して「宇宙の化石」とも言えるビッグバンの証拠である、CMBという電波をとらえてきた観測研究の歴史を紹介しました。そして、この「宇宙の化石」にはうずまき模様があり、それをとらえることができれば現在分かっているよりもさらに初期の宇宙の姿を知ることができると解説しました。長谷川講師はさらに、このうずまき模様をとらえるためKEK CMBグループをはじめとする世界8カ国から約100名の研究者が参加する、チリでの地上観測実験ポーラーベア-2(POLARBEAR-2)と、13カ国から約350名の研究者が参加するライトバード(LiteBIRD)衛星計画が進行中であると、チリの写真を交えつつ紹介しました。両計画では、CMBの偏光パターンの内、Bモードと呼ばれるうずまき模様を観測してインフレーション期に生成されたと考えられている重力波(原始重力波)をとらえ、そこからインフレーションが起きた証拠をとらえることを目指しています。このうずまき模様は観測できたらノーベル賞級の大発見なので、史上初の観測を目指し現在世界中で激しく競争中とのことです。

 

質問の時間では、会場、オンライン共にたくさんの質問が寄せられました。例えば、「地球と宇宙はどちらが早く終わるのですか」という質問に対して、松原教授は「太陽は、自身を輝かせている燃料が無くなると寿命を迎えますが、その時太陽はふくらむと考えられています。すると地球はそこに飲み込まれてしまうでしょうから、その時地球も寿命を迎えます。つまり、地球は宇宙より先に終わります。」と解説しました。また、「うずまき模様があるとしたらどこにあるか、わかっているのですか」という質問に対して、長谷川講師は「CMBのうずまき模様は宇宙のどの方向を見ても見えるはずです。特定の方向だけ見えるものがあればそれはニセモノなので、まどわされないように観測することが重要です。」と回答しました。

 

開催後の参加者アンケートからは「分かっていないことが多いなかでも発見があり、それがおもしろいのですね」、「宇宙の中心について、積年の疑問が今日、解けました」、「宇宙の化石の中のうずまきを世界中で見つけようとしている話が面白かった」といった感想が寄せられました。

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