ニュース

庭瀬 暁隆氏、「原子核談話会新人賞」と「日本物理学会若手奨励賞 」を受賞

素核研・和光原子核科学センターの博士研究員、庭瀬 暁隆(にわせ としたか)氏が第17回(2023年)日本物理学会若手奨励賞 (実験核物理領域)および第29回原子核談話会新人賞を受賞し、オンラインで授賞式が行われました。日本物理学会若手奨励賞は、将来の物理学を担う優秀な若手研究者の研究を奨励し、学会をより活性化するために日本物理学会により制定された賞です。世界初となる「超重元素の直接質量測定」の成果が評価され、今回の受賞となりました。

 

元素の周期表はもが少なくとも一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。元素が原子番号順に並んでおり、現在までに118番までの元素が発見されています原子番号1の水素から92番目のウランまでは自然界に存在していますが、93番目以降は加速器実験により核の合成がされ、識別・同定されてきました。その中でも原子番号が104以上の元素を「超重元素」と言います。これらは、正の電荷を持つ陽子間の反発力が大きく、核力による引力との絶妙なバランスの上でどうにか存在できている状態です。原子番号が大きくなるにつれ,原子核は不安定になっていきます。どこまで原子番号の大きい元素が存在できるか、新元素の探索が続けられています。 

では、なぜ自然界に存在しない超重元素を人工的に作り出す必要があるのでしょうか?庭瀬氏はこの質問に原子核の存在限界がどこまであるのかを知りたいからと答えました。また、この超重元素の先に「安定の島」と呼ばれる領域があると予測されています。本来、原子核は重くなるほど、核が安定しないために寿命が短くなりますが、「安定の島」の領域にある原子核は一転して極めて寿命が長いと予想されているのです。庭瀬氏はこの「安定の島」が本当に存在するのかを確かめたいと言います。なぜ超重元素が存在できるのかを解明するためには、原子核がどれだけ強固に結合しているかを表す、結合エネルギーを系統的に調べることがカギであり、そのためには庭瀬氏の研究テーマである、超重元素同位体の質量をくまなく精密測定することが必要です。質量というのは、原子核の安定性、存在を決める一番基本的な物理量で、その質量を精密に測ることで不安定な原子核の構造の解明に寄与できます。これらを網羅的に測っていくことで、100年以上も原子核が安定して存在する超重元素を見つけ出すことが出来かもしれません。 

 

理化学研究所の加速器施設において核融合反応で生成されたドブニウム同位体 (257Db)は、研究グループが開発した MRTOF 質量分光器と庭瀬が中心となって開発したα-TOF 検出器を用いることで、一日に 2 程度しか観測できない稀な事象にも関わらず、質量を 100万分の1 の相対精度で測定できました。これは、超重元素同位体を直接質量測定した世界で初めての実験です。 

 

α-TOF 検出器とは、質量測定に⽤いる⾶⾏時間測定器(TOF)に、測定対象核からのα 崩壊粒⼦測定機能を付け加えた検出器でα崩壊といわれる、不安定な原子核がα線という放射線を放出して別の原子核に変わるまでの時間とα線エネルギーの双方と相関をとって測定することができますこの検出器の開発により、新たな崩壊分光研究が可能になりました。庭瀬氏は九州大学大学院の修士課程の時点で検出器の開発を始め、5年をかけて完成させたのち線源を用いた性能評価や加速器を用いたオンライン試験を主導しました。短期間のうちにα-TOF 検出器を完成させ、その特徴を活かした核構造研究や希少⽣成率の超重核に対する質量の直接測定を成功に導いた庭瀬⽒の研究者としての⼿腕が高く評価され、今後のさらなる活躍が期待されています。

今回の受賞を受けて庭瀬氏は「日本物理学会若手奨励賞や原子核談話会新人賞という原子核の業界では非常に名誉ある賞を頂き、大変嬉しく思っています。実験物理学の研究は国際共同研究もとで行っています。今回の成果は非常に多くの方々の協力があって得られたものです。業績を評価していただいたことも嬉しいですが、それ以上に研究を指導してくれた方々に感謝申し上げたい」とコメントしました。現在は、113番目の元素であるニホニウムの質量を日本人として最初に測定すべくプロジェクトを進めているとのことです。 

リンク

ページの先頭へ