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七夕講演会2023「宇宙のなぞを解き明かせ!~ブラックホールと重力波~」を開催

7月2日(日)、七夕講演会2023「宇宙のなぞを解き明かせ!~ブラックホールと重力波~」を開催しました。本講演会はKEKと公益財団法人つくば科学万博記念財団(つくばエキスポセンター)が毎年開催しているイベントで、全国同時七夕講演会に登録されています。全国同時七夕講演会とは、七夕の前後の期間に全国各地の科学館や研究機関などで天文・宇宙関連の講演会を行う、日本天文学会主催のイベントです。

今回の七夕講演会では、理論センターの郡 和範(こおり かずのり)准教授(7月1日より国立天文台 教授)と量子場計測システム国際拠点QUPの茅根 裕司(ちのね ゆうじ) 特任助教の2名が午前と午後の2回講演を行い、エキスポセンターの会場には、約80名の親子連れや一般の方が参加しました。

郡氏は、「ブラックホールと重力波の理論で探る宇宙の誕生のひみつ」と題し、七夕にまつわる話から始め、宇宙がインフレーションと呼ばれる膨張から始まり、そのあとにビッグバンが起きたとする理論を説明しました。「銀河の地図」と呼ばれる最新の3Dの銀河の観測の映像と、ビッグバンの火の玉の表面の写真を使って、光で見ることのできる果て、すなわち宇宙が138億年前のビッグバンの状態になるまでを紹介しました。温度ゆらぎの分布が色で分けられており、色の濃いところで銀河が生まれたと考えられています。郡氏は、空間が激しく揺らいだ時にできる「重力波」が、ブラックホールがぶつかった時に作られるほか、宇宙が生まれて、光の速度を超えるほどの激しい膨張が起きた時に作られたとする理論を、動画を使って分かりやすく紹介しました。
ブラックホールは恒星が爆発した後に生じると信じられていますが、郡氏によると、実のところはその起源はまだわかっていないといいます。また、宇宙初期の原始ブラックホールは、インフレーションによる密度ゆらぎの大きいところが固まり、それがつぶれて生まれたと考えられています。郡氏は、2015年に重力波を発見した米国のLIGO(レーザー干渉計重力波観測所 )実験は、このインフレーションが作った原始ブラックホールを見つけた可能性もあり、さらに原始ブラックホールがダークマターになる可能性を探る研究を世界に先駆けて行っていると説明して講演を締めくくりました。

次に、茅根氏が「重力波で解き明かす宇宙の始まりのなぞ」について講演しました。茅根氏は、チリにある標高5000メートルのアタカマ砂漠で行われているポーラーベア実験の当初から携わり、現場での様子など写真を使って説明しました。ポーラーベア望遠鏡は超伝導カメラを搭載したパラボラアンテナのような装置で、宇宙の誕生後まもないビッグバンのなごりである宇宙マイクロ波背景放射(CMB)を観測しています。CMBは宇宙の温度を表しています。CMBで見る宇宙の姿は約マイナス270度の世界で、高温高密の火の玉のようなビッグバンのなごりがこれほど冷たいのは、宇宙が膨張している証拠にほかならない、と茅根氏は説明しました。
郡氏も説明したように、最新の研究成果から、宇宙はビッグバンで始まったのではなく、量子のゆらぎで始まったと考えられています。そして宇宙始まりのゆらぎの際に重力波が作られるとも考えられています。重力波の大きな性質は、何でもゆがめてしまうことで、CMBもゆがめられたであろうと考えられていますが、そのゆがみが小さかったためにポーラーベア実験でも見ることはできていません。そこで、LiteBIRD(ライトバード)衛星計画が進められています。これは望遠鏡をJAXAのH3ロケットで宇宙に打ち上げて宇宙で観測する実験です。重力波によるCMBのゆがみを観測できれば、それは宇宙の始まりを観測したことを意味します。茅根氏はぜひこのLiteBIRD計画に期待してほしいと参加者に呼びかけ講演を終了しました。

会場の参加者からは、重力波の起こり方や、宇宙の外側には何があるのか、など多くの質問が寄せられました。

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