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おとなのサイエンスカフェ第5夜「宇宙をつくる素粒子のパズル」開催

11月24日(金)、KEK素粒子原子核研究所(素核研)が主催する、おとなのサイエンスカフェ第5夜「宇宙をつくる 素粒子のパズル」つくばセンタービル co-enで開催しました。

素核研では、素粒子、原子核という極微な世界から広大な宇宙までの幅広い分野に対して、理論および実験の両側面から総合的研究を行っており、この世で最も小さい素粒子を研究することでこの世で最も大きい宇宙の謎の解明に挑み続けています。

5回目となる今回のサイエンスカフェでは、北野 龍一郎(きたの りゅういちろう)素核研理論センター教授が話し手となりました。宇宙がどのように始まったのか、なぜ素粒子が存在するのか、そしてこの宇宙は人間に都合が良い?理論物理学者の北野教授が参加者に疑問を投げかけながら宇宙と素粒子にまつわる話題を提供しました。


宇宙はインフレーションから生まれたと考えられています。インフレーションの後に、再加熱と呼ばれる現象が起きます。これがいわゆるビックバンで、宇宙は高温・高圧のプラズマ状態となりますが、そのあとに宇宙はまた冷えていきます。そして暗黒物質の世界が始まり、やがて宇宙は透明になり原子が生まれ、銀河が生まれ、太陽や私たちの地球が誕生します。北野教授はインフレーションと呼ばれる膨張は、宇宙の見える範囲にいた「ご近所さん」が膨張により見えないところまで広がってしまったということであると図を使って例えました。

そしてアインシュタイン方程式を紹介し、「時空」を表す数式は「物質」とダークエネルギーと考えられる「宇宙項」を足し合わせた式と同じふるまいであると説明しました。

インフレーションを起こした時空のエネルギーにより、粒子と反粒子が同じだけ生まれ、やがて対消滅します。では、なぜ今も素粒子は存在しているのでしょうか。物質を構成する素粒子自体にその謎が隠されているようです。この謎についてはさまざまな仮説がありますが、どの仮説であったとしても、素粒子標準理論を超える「なにか」の存在が考えられると北野教授は説明します。

このように考えると、私たちが存在していることは奇跡のようにも感じられます。それとも私たちがいるから宇宙は存在しているのでしょうか。例えば、私たちの周りに空気があるのはなぜか?それは私たちが住むには空気が必要だからです。同じように、人間がいるところに人間が住める宇宙があるだけかもしれないという可能性もあります。物理学者はこのような可能性も無視することはできないといいます。

138億年前の宇宙誕生の謎を紐解くには新理論と新しい実験結果が求められており、この探求はしばらく続くと北野教授はいいます。物理学者たちは、素粒子の一つであるニュートリノの質量に謎を解く鍵があるのではと考えています。さらに暗黒物質やヒッグス粒子との関係など、さまざまな謎の断片がどのようにつながるのか、実験で素粒子を詳細に調べる一方で、理論家は正しい理論を追い求めて日々研究を続けていると北野教授は話してサイエンスカフェを締めくくりました。


参加者からは、

「正しい理論は美しいという言葉が印象的だった」

「理論は難しいが聴いていて楽しい」

など、たくさんの感想を寄せられました。

おとなのサイエンスカフェは金曜日の夜、大人の特権である美味しいお酒やおつまみを楽しみながら、極微なサイエンスの話を楽しんでもらうことを趣旨に企画したもので、今後もシリーズで開催する予定です。次回は少し先になりますが、来年3月22日(金)に実施する予定です。

詳細が決まりましたら素核研webサイトやSNSでお知らせします。

素核研 Xhttps://twitter.com/kek_ipns

素核研Facebookhttps://www.facebook.com/KEK.IPNS/

 

これまでのおとなのサイエンスカフェのアーカイブ を素核研のYouTubeチャンネルで随時公開しています。下記のリンクから視聴できます。

素核研YouTube

第1夜おとなのサイエンスカフェ「素粒子で宇宙の謎に挑む」

第2夜おとなのサイエンスカフェ「J-PARCで探る 宇宙、物質の謎」

 

 

 

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