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SuperKEKB/Belle II実験の2024年の運転が無事終了しました

電子陽電子衝突型加速器SuperKEKBは、2022年夏から約1年半にわたる長期改修期間(LS1)ののち、2024年1月からビーム運転を再開し、夏季停止期間を挟み、12月27日に無事に2024年の運転を完了しました。最終日に5.1×1034 cm-2 s-1のルミノシティ(衝突性能)を達成し、SuperKEKB加速器自身が保持する世界最高記録を更新しました。

 

Belle II実験は、SuperKEKBで作り出したB中間子などの粒子の性質を詳しく調べ、宇宙の未解明の謎を解く鍵となる新しい物理現象を探索する素粒子物理学実験です。新物理の存在を明らかにするには、非常に稀な確率で起こる特有の事象を精度良く測定する必要があり、そのためには膨大な実験データが求められます。この目的を達成するため、ルミノシティを向上させることが不可欠です。
ルミノシティを上げるには、加速器を精密に制御し、安定したコンディションを維持する必要があります。電子や陽電子をSuperKEKBに入射するための線形加速器にLS1中に設置したパルス電磁石を調整し、1ショットで入射する2つのビームバンチ(塊)をそれぞれ制御することで、定常的に安定に入射できるようになりました。そのほか、機械学習によりその時々の最適な設定を探し出す研究も進み、入射効率の改善につながりました。

 

電子ビームと陽電子ビームが周回するメインリングでは、ビームの挙動が突然不安定になる現象が以前から発生していました。突発的なビームロス(SBL:Sudden Beam Loss)と呼ばれるこの現象は、SuperKEKBの安定運転とルミノシティ向上の障害の一つとなっており、加速器やBelle II測定器を損傷する危険もありました。SBLの原因究明と解決はプロジェクト成功のための重要な課題であり、Belle II実験グループは加速器グループと連携してこの問題に取り組んできました。
2024年の運転中に、ビームパイプの結合部分に使用した真空の封止材が変性したものとみられるダスト(ごみ)が、SBLに深く関与していることが明らかになりました。一部区間で変性した封止材を除去した結果、SBLが大幅に減少し、ビームの安定運転と種々の調整が可能となりました。その結果ルミノシティが向上、運転最終日に5.1×1034 cm-2 s-1を達成し、世界記録を更新することができました。(※)

 

素核研Belleグループの松岡 広大(まつおか こうだい)教授は、「今後は、次の加速器運転でのさらなる安定化に向けて、まだ残っているSBL発生源の解消や、加速器データの解析を進め、10×1034 cm-2 s-1のルミノシティを目指します。Belle IIコラボレーションは今期の運転で取得した衝突データを追加して物理解析を進め、新物理の発見を目指します。」と話しました。

 

※ただし、この時はルミノシティ向上のための調整運転中で、Belle II測定器保護のため、一部の検出器を停止していました。

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