ニュース

COMET実験用検出器ソレノイド磁石を設置しました~100兆分の1の現象に挑む実験が前進~

COMET( COherent Muon to Electron Transition )実験は、ミューオンという素粒子を使って、新しい物理現象の発見を目指す国際共同実験です。大強度陽子加速器施設J-PARCにて、ミューオンが約100兆回に1回程度という極めて稀な確率で電子に変化すると考えられている「ミューオン-電子転換過程」を探索します。

素粒子の標準模型では、ミューオンは通常、ニュートリノ2つと電子に崩壊するか、原子核に捕獲されてニュートリノを放出します。このとき、電子やミューオンといった粒子の種類の数(レプトンフレーバー数)は反応の前後で変化しません。これを「レプトンフレーバー数の保存」と言います。しかし、「ミューオン-電子転換過程」は、ミューオンがニュートリノを出さずに電子へと転換する事象で、レプトンフレーバー数の保存が破れてしまいます。そのため、もしこの現象が確認されれば、標準模型を超える新しい物理の手がかりとなります。


 

COMET実験では、2023年に実験専用のビームラインが完成しました。さらに2024年10月には、実験の超伝導磁石システムの中核をなす「π(パイ)中間子捕獲ソレノイド磁石」が、ビームラインに設置されました。この磁石は内部に設置された標的で発生するπ中間子を磁場の働きで集めながら進む方向をそろえて実験室へと輸送する、直径2m ×長さ6.5m の大型磁石です。

そして、このたび設置された検出器ソレノイド磁石の設置をもって、一連のソレノイド磁石がCOMET実験施設まで無事接続されました。この設置作業も慎重に進められ、クレーンや専用治具を用いてミリメートル単位の位置合わせが行われています。検出器ソレノイド磁石は大阪大学のグループがJ-PARC低温セクションと協力して製作したもので、COMET実験ではこの磁石により電子の運動量を精密に計測しミューオン-電子転換過程の信号をとらえます。

▼設置の様子は以下の動画からご覧いただけます▼
素核研YouTube: 「COMETソレノイド磁石設置」

 

COMET実験に携わるKEK素粒子原子核研究所 ハドロングループの三原智教授は「今後は磁石に電流を流して発生磁場の確認と非常停止試験を行った後、検出器を磁石の中に組み込みます。実験グループで協力して早期の実験開始を目指しています」と今後の展望を語りました。

 

関連リンク

ページの先頭へ