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おとなのサイエンスカフェ第20夜「なぜ宇宙にはウランが存在するのか―重元素誕生の謎を追う」を開催しました
2026年8月24日
7月31日(金)、つくばセンタービル co-enにて、KEK素粒子原子核研究所主催のおとなのサイエンスカフェ第20夜「なぜ宇宙にはウランが存在するのか―重元素誕生の謎を追う」を開催しました。
自然界に豊富に存在する最も重い元素であるウランは、どのように宇宙で作られたのでしょうか。今回は、素粒子原子核研究所・和光原子核科学センターの伊藤 由太(いとう ゆうた)助教が天体現象と原子核の世界を結び付けながら、重元素誕生について解説しました。さらに、実際に研究で使われる「イオントラップ」の実演も行いました。
宇宙でウランはどのように生まれたのか
伊藤助教は、ウラン238の半減期が約45億年と非常に長く、地球の年齢とほぼ同じであることを紹介しました。そのため、宇宙で作られたウランは長い年月を経ても完全には失われず、現在でも自然界に存在しています。
そのウランは、宇宙でどのように作られたのでしょうか。
鉄より重い元素は、ビッグバンや恒星内部だけでは作ることができません。伊藤助教は、恒星の進化の中でゆっくり中性子を取り込む「s過程」と、大量の中性子が存在する中性子星合体などの環境で急速に元素が作られる「r過程」について解説しました。現在の理論では、ウランはr過程によって合成されると考えられていますが、その仕組みには実験的に未解明な部分が多く残されています。そのため、r過程に関与すると考えられる未知の原子核の性質(質量と半減期)を理解する必要があります。伊藤助教は、原子核の質量について説明しました。
原子核の質量をどうやって精密に測るのか
原子核の質量は原子核の結び付きの強さを反映しており、中性子の取り込みやすさや崩壊のしやすさといった、r過程を左右する重要な情報につながります。
伊藤助教は、原子核の質量を測定する方法として「飛行時間式質量分析法」を紹介しました。原子核の質量を測るときには、電荷を持つ「イオン」の状態にして扱います。電圧で加速したイオンを飛ばし、一定距離を進む時間を測定することで、質量の分かっているイオンと比較しながら未知の原子核の質量を求めることができます。
しかし、r過程で現れる原子核は半減期が短く、生成される数も少ないため、測定は容易ではありません。また、質量の近い原子核を区別し、r過程の解明に要求される情報を得るには極めて高い精度が求められます。飛行時間のわずかな違いから質量の違いを見分けるため、飛行時間を正確に測定することが重要です。そのため、イオンを長い距離飛ばして時間の差を大きくし、測定精度を高める工夫が必要になります。
イオンを閉じ込める「イオントラップ」
高い精度で飛行時間を測るためには、イオンを同じ場所でいったん止め、「よーいどん」で一斉にスタートさせることも重要だと伊藤助教は説明しました。そこで登場するのが、イオンを一定の場所にとどめる「イオントラップ」です。イオントラップは、電磁場を利用して荷電粒子であるイオンを三次元的に捕捉する装置です。イオンをあらかじめ閉じ込めておくことで、その後の輸送や操作を効率よく行うことができます。会場では、実際にイオントラップを使ったデモンストレーションも行いました。電圧をかけるとイオンが捕捉される様子を観察しながら、参加者は伊藤助教の説明に熱心に耳を傾けていました。
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目の前でイオンが捕捉される様子(赤い部分)を観察する参加者たち
イベント後のアンケートでは、次のような感想が寄せられました。
- 「ウランは半減期が約45億年もあること。ここまで安定していると想像もしなかった。地球ができた頃から存在するウランが身の回りに今もあるのかと思うと、天文学的スケールに驚かされる」
- 「重元素の生成にまだいろいろな謎があることが印象に残った」
当日の様子はYouTube素核研チャンネルにアーカイブ動画を公開する予定です。
素核研チャンネル – YouTube
素核研では、素粒子、原子核という極微な世界から広大な宇宙まで、理論と実験の両面から研究を進めており、この世で最も小さい素粒子を研究することでこの世で最も大きい宇宙の謎の解明に挑み続けています。「おとなのサイエンスカフェ」はそうした研究の面白さを、お酒やおつまみを楽しみながら研究者と対話し、身近に感じてもらうために企画したものです。今後もシリーズとして開催していく予定です。
次回は、8月28日(金)に開催します。
詳細はこちらから
https://otona-sciencecafe-kyoto.peatix.com/





