Belle II 実験グループに所属する名古屋大学の飯嶋徹教授(専門:高エネルギー実験物理学)が2月16日、米テキサス州オースチン市で開かれたアメリカ科学振興協会(AAAS)2018年次大会の科学セッション「反物質の謎に迫る」(Investigating the Mysteries of Antimatter)で講演しました。
AAASは米科学雑誌「サイエンス」の発行元としても知られる非営利組織で、年次大会には世界中から多くの研究機関がブースやセッションの企画などで参加し、研究者コミュニティだけでなく、一般市民向けの情報発信が行われることで知られています。セッション「反物質の謎に迫る」は、欧州原子力機構(CERN)とKEKが主催し、宇宙の初期には同じだけ存在した物質と反物質のうち、物質だけが優勢になった謎について、3人の研究者の講演を通じて紹介する目的で開かれ、約70人の研究者や学生らが出席しました。
飯嶋教授は、マサチューセッツ工科大学(MIT)とCERNの研究者に続き、「加速器で物質、反物質の非対称性を調べる」と題して英語で講演。KEKとBelle実験と米SLACのBaBar実験が2001年、B中間子の崩壊におけるCP対称性の破れを計測し、小林・益川理論の予測を裏付け、それが両氏のノーベル物理学賞受賞に結びついた経緯を語りました。その上で、「しかし、これだけでは反物質の消失と、ダークマター(暗黒物質)の存在を説明することができず、標準理論を超える新しい物理があるに違いありません」と語り、その謎に迫るため、今年4月にも電子・陽電子の初衝突が期待されるBelle II 実験の概略を紹介しました。
また、実験が終了する2025年ごろまでに、新物理の関与によるCP対称性の破れ、レプトンのフレーバー保存の破れなどの証拠が得られる可能性に言及し、「この宇宙において物質、反物質の非対称の問題は未だに大きな謎で、まもなく初衝突を迎えるSuperKEKB加速器とBelle II 実験が目指す新物理の発見が、その謎を解く鍵になります。ぜひ注目してください」とアピールしました。
会場からは「電子と陽電子が衝突して対消滅すると光子になると聞いたことがあるが、どうやってそこからB中間子対ができるのか」「物質優勢の宇宙だと、なぜバリオン数保存則が破れるのか」「反物質宇宙がどこかにあれば、バリオン数保存則が破れる必要はないのか」などの質問が寄せられたということです。
関連リンク
アメリカ科学振興協会(AAAS)関連のホームページ
- AAAS Annual Meeting 2018, Scientific Session “Investigating the Mysteries of Antimatter”
- AAAS Annual Meeting 2018
- AAAS : American Association for the Advancement of Science
プロジェクトチームのホームページ
ニュース・特集など
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