KEKは3月23日、つくば市内で記者会見を開き、日本最大の粒子加速器であるSuperKEKB加速器のメインリング(MR)に電子ビームを蓄積させるプロセスが無事に終了し、Phase II 運転が本格的に始まったと発表しました。Belle II 測定器でもビームパイプを電子が通過したことを示す放射線が検出されており、いよいよ電子・陽電子の衝突実験に向けた準備が本格化することになります。
加速器研究施設によりますと、電子ビームのMRへの入射は3月19日午後から始まり、同日深夜には入射された電子ビームが一周3キロのMRを20周ほど周回したことを確認。さらに、翌日午前中からMRに入射した電子ビームを電磁石によって高周波加速し、電子ビームの定常状態を維持する(蓄積する)取り組みを開始し、長時間の調整の末、21日未明には電子ビームがMRに蓄積され、安定したビーム状態が維持されていることを確認した、ということです。
Belle II 測定器には、崩壊点検出器(VXD)の代わりに、衝突実験のバックグラウンド放射線を測定するBEAST装置が設置されていますが、その検出モニターでも放射線を計測。エネルギーを失うなどして軌道を外れた電子ビームの一部がビームパイプなどにあたり、放射線が検出されたと見られます。
つくば市の文部科学省研究交流センターで開かれた記者会見には、およそ10人の報道関係者が集まり、加速器研究施設の赤井和憲教授と、素粒子原子核研究所の後田裕教授が説明のために出席。記者からは「電子ビームの蓄積をどのように確認したのか説明してほしい」「SuperKEKB加速器が目指すルミノシティ40倍の意味は」「衝突実験で期待される成果について教えてほしい」など多くの質問が寄せられました。
陽電子をMRに入射・蓄積する取り組みは、3月26日ごろから開始され、それが完了すれば、電子・陽電子をMRに蓄積し、初衝突させるための調整がスタートすることになります。赤井教授は「ビームの広がりを少し絞って調整し、また少し絞っては調整するという取り組みを繰り返すとともに、タイミングや衝突点の位置などを調整して衝突させます。初衝突に向けた準備が全て整うまで、一ヶ月程度の時間がかかる見通しです」などと説明しました。
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