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J-PARCに行ってきました 2007.9.13 |
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〜 「社会科見学に行こう!」来訪記 〜 |
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普段はあまり目にすることの無い大企業の工場や地下の大規模工事現場を見学してみたい、一人では心細いけど、団体だと手続きもスムーズ。そんな「大人の社会科見学」がこのところ静かなブームとなりつつあるようです。その名も「社会科見学に行こう!」という団体の代表の小島健一さん(※1)とメンバーの方達がJ-PARCを見学された時の様子を手記にしていただきました。 期間限定に弱いのです。 8月8日。世間では立秋とかパパの日と呼ばれている日に、私と、「社会科見学に行こう!」のメンバーの柴尾英令さん、開田裕治さん、開田あやさんの4名で、茨城県の東海村にある「J-PARC」の見学に行ってきました。J-PARCとは日本原子力研究開発機構(JAEA)と高エネルギー加速器研究機構(KEK)が共同で建設、運営を行っている大強度陽子加速器施設。 きっかけは、高エネルギー加速器研究機構の広報室から、「秋になるとシンクロトロンが稼働するため、見学するなら今ですよ」というメールをいただいたことからです。それならばと、「加速器の夜」(※2)に出演する上記3名に声を掛けたところ、二つ返事で「是非」と返ってきました。こういう時フリーの仕事をしている人間は強い。 東海村の最寄り駅「東海」は上野から特急に乗って約1時間。意外と近いぞ東海村。東京からは楽に行けます。片道4000円という交通費さえ気にしなければ。 東海駅からはタクシーに乗り10分程度でJ-PARCへ。 世界最強の陽子シンクロトロンを見学 J-PARCに着くと大強度陽子加速器計画推進部の吉岡正和教授が出迎えてくださいました。挨拶もほどほどに一行はバンに乗り早速J-PARC見学。 J-PARCはリニアック、3GeVシンクロトロン、50GeVシンクロトンの3種類の加速器で構成されています。リニアックはすでに稼働しているので見学不可。今回、始めに見学したのはJ-PARCのコントロールルーム。まだ本始動していないので、スペースにゆとりがありましたが、施設が完成した時には機材でビッシリになるとのこと。サラッと通り過ぎたのですが、一番目を惹いたのは「メガマック」の空き箱です。リニアックで達成した加速エネルギーの「181MeV」に対抗すべく、積まれた「メガマック」の空箱。181"メガマック"を目指し、みんなでメガマックを食べながら研究していたのでしょうね。研究者同士の仲の良さが垣間みれます。 次に見学したのは「3GeVシンクロトロン」。靴にカバーをかけて建物の中に入りました。中に入るとKEKの加速器より、配置されている電磁石が大きい!ゴツい!カッコいい! J-PARCではKEKにある陽子シンクロトロンの4倍のエネルギーのビームを作るのだとか。その強度は100倍以上。これは世界最強の強度だそうです。 3GeVシンクロトロンを一周したら50GeVシンクロトロンへ移動。現在はまだ工事中なので大勢のエンジニアが計測や取り付けなどをしていました。KEKで加速器を見る時はいつも整備されている状態でしたので、加速器のまわりで慌ただしく作業をしている方がいるのがなんだか不思議でした。吉岡教授の話では、みなさんミクロン単位で調整をされているのだそうで... 50GeVシンクロトロンは全長1500m。それを全てミクロン単位で制御しているなんて、なんと気の遠くなることなのでしょう。 遺跡と山車 加速器を一通り見学したら屋外に移動して、ニュートリノという粒子を作り出すためのターゲットステーションを設置する場所の見学。ターゲットステーションは奥行き15m、幅4m、高さ11mにもなるので、設置した後に建物を造るのだそうです。その場所はコンクリートの谷のようで、まるで遺跡を発掘している場所のようでもありました。蛇足ですが、J-PARCを建設する際、実際に「村松白根遺跡」という塩田の遺跡が見つかったのだとか。遺跡と縁深いJ-PARC。 設置場所を見終えた後は、ターゲットステーションの搬入を見ることになりました。40度近い屋外で日陰を見つけ待機すること約20分。平たい特殊車両に乗せられたターゲットステーションは、5名程度の作業員と、30名くらいの研究員やプレスを引き連れてやってきました。作業員の顔は真剣そのものですが、それ以外の人達はみんなニコニコしていて、その様子はまるで夏祭りで山車に付いて行く少年たちのようでした。 搬入を見届けると、 ターゲットステーションを設計したという素粒子原子核研究所の多田将さん案内の下、ターゲットステーションを格納する現場を加速器のラインから見学。ターゲットステーションは一度使われてしまうと強い放射能を帯びてしまうため、修理も難しいそうです。そのため細心の注意で設計したとのこと。 その後、最後の見学として、ハドロン実験施設を見せていただきました。設備としてはまだ建物とコンクリートしかなかったのですが、今後ここに50GeVシンクロトロンのビームラインが通り様々な実験が行われるそうです。 世界の原子核物理を牽引するJ-PARC こうして、J-PARCの見学は終わりました。J-PARCの陽子シンクロトロンは従来KEKで運転していた陽子シンクロトロンの100倍以上の強度を持っているため、従来では100日かかっていた実験が1日で終わる可能性もあるそうです。つまり、この設備が完成すれば、今までの何十倍という早さで結果がでることもあり得る。ひいてはそれだけ科学の進歩が加速すると考えてもいいでしょう。また、世界最強ということは、世界中でここでしかできない実験もあるわけです。世界中から研究者が集まり、日本の科学的地位の向上にも役立つことでしょう。 J-PARCの本格稼働は2009年春。今後J-PARCが日本にどんな結果をもたらしてくれるのか、今からとても楽しみです。 (見学団体「社会科見学に行こう」主宰 小島健一) ※1 筆者紹介
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