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ニュートリノを作る装置 2007.8.9 |
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〜 ターゲットステーションをJ-PARCに搬入 〜 |
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KEKと日本原子力研究開発機構(JAEA)が共同で東海村に建設を進めている大強度陽子加速器施設(J-PARC)についてはこれまでにも何度かお伝えして来ました。J-PARCでは世界最高強度の陽子ビームから様々な二次粒子を作り、素粒子・原子核から物質構造科学・生命科学などの幅広い分野で研究が進められる予定です。 中でも、J-PARCから岐阜県飛騨市神岡町にあるニュートリノ検出器スーパーカミオカンデにニュートリノを打ち込み実験を行う、長基線ニュートリノ振動実験(T2K実験※)は、世界中から大きな注目を集めています。 ※T2K:Tokai to Kamiokaの略 ニュートリノを作る心臓部 ニュートリノは、陽子ビームを炭素標的に照射することで発生させます。陽子ビームが炭素標的に衝突する衝撃でパイ中間子が生成されますが、そのパイ中間子は寿命が短く、数十メートル飛行するとミュー粒子とニュートリノに崩壊します。 ニュートリノは電気を帯びていないため、その軌道を制御することは出来ません。そのため、ニュートリノになる前、パイ中間子の段階で、それらを出来るだけスーパーカミオカンデの方向へ向けて収束させてやる必要があります。その役割を果たすのが、電磁ホーンです。 これらの炭素標的と電磁ホーン(3台直列に配置して用います)を設置する場所が、ターゲットステーションです。言わば、ニュートリノ発生装置そのものであり、ニュートリノビームラインの心臓部に当たります。 ニュートリノが生成する過程で、強い放射線が発生するため、炭素標的と電磁ホーンはヘリウム容器の中に設置され、そのヘリウム容器は、パイ中間子が飛行しながら崩壊していくためのトンネルであるディケイボリューム(崩壊領域)と接合され、ひとつの巨大な気密容器(容積1300立方メートル)を構成しています。ディケイボリュームは94メートルの長さがありますが、その中央部(50メートル分)は2005年に完成しました。そして今年の8月から、いよいよ、ターゲットステーションのヘリウム容器と既設のディケイボリューム中央部とをつなぐ、ディケイボリューム上流部(16メートル分)※の設置が開始されます。 ※パイ中間子が飛んでくる方向が上流、飛んで行く先が下流 巨大なヘリウム容器 ターゲットステーションのヘリウム容器は、全長15メートル、幅4メートル、高さ11メートル、重量300トンの巨大な鋼製容器です。標的、電磁ホーン、並びにそれらから発生する強力な放射線を遮蔽する遮蔽体を支え、かつ、真空引きに耐えられる強度を保持するため、100ミリもの厚さの鋼板でつくられています。また、ニュートリノ発生の際に生ずる莫大な量の熱を吸収するため、冷却構造を持ち、水により冷却されます。 この巨大な容器は、そのままの状態では工場からの輸送や現地での設置が行えないため、6個のブロックに分割して輸送し、現地でそのブロックをつなぎ合わせ、ひとつの容器とします。また、ディケイボリューム上流部は、これも180トンもの重量がありますので、輪切りにした状態で5つのブロックに分割して輸送し、現地でつなぎ合わせます。 これらのブロックは船で常陸那珂港まで海上輸送され、そこで陸揚げし、J-PARCまでは陸上輸送となります。陸上輸送は、8月3日から8日までの間、毎日一定時間道路を封鎖して行われました。 世界初の実験に挑戦 T2K実験では、かつて行われたニュートリノ実験(K2K実験※)の100倍の強度のニュートリノビームを作り出すことによって、ミューニュートリノが電子ニュートリノに変わるという現象を探します。これは、世界でも未発見の現象です。 ※K2K:KEK to Kamiokaの略 ニュートリノの性質を調べることで、物質の起源は? この宇宙はどのようにして出来たのか? といった謎に迫ること、それがこの実験の目的です。2009年4月から開始予定のこの実験の成果に、是非御注目下さい。
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