KEKキャラバン、3月は福岡、兵庫、京都、茨城、東京、大阪、愛媛に派遣

 

KEKでは学校や社会施設などで行われる授業のサポートとして、地方自治体、NPO等の団体が企画する講習会や勉強会などに講師を派遣しています。これまで全国各地に93件の派遣を行いました(3月31日現在)。

3月3日(土)、福岡県北九州市の北九州イノベーションギャラリーで、小学生とその保護者約50名を対象に、講演会「宇宙はなにからできているんだろう」と実験教室「きりばこをつくってみてみよう」を行いました。

講演では、KEKの概要紹介を行ったのち、身のまわりにあるものや私達自身も「物質」からできているということを説明しました。そして、物質を分けていった際「これ以上分けられないもの」にあたるものが、時代でどのように変遷してきたかを話し、現在では「素粒子」が最小単位であることを紹介しました。宇宙が生まれたばかりの頃はこの「素粒子」しかなかったということを示し、加速器が「宇宙が生まれたばかりの頃の状態」を作り出し、測定器で素粒子を調べることができるということ、そして、KEKはその加速器と測定器で宇宙の謎を明らかにするための研究を行っていることを話しました。引き続き行われた実験教室では、霧箱を製作し、放射線の観察を行いました。

講演後には「宇宙は他にあるの?」「研究者になるには」などの質問が寄せられました。アンケートでは、「素粒子ということばが印象に残りました」「見えなかった放射線が見られたのが不思議だった」といった感想がありました。


参加者からの質問に答える、素粒子原子核研究所の中村勇助教(左)と同研究所・小森真里奈 広報コーディネータ


保護者も一緒に霧箱を観察

3月4日(日)、兵庫県神戸市立青少年科学館で、小学4年生~中学生とその家族を対象に講演と実験教室を実施し、合わせて88名の参加がありました。

午前には、「宇宙はなにからできているんだろう?」というタイトルの講演を行いました。宇宙で物質は4%に過ぎず、残りは暗黒物質や暗黒エネルギーで占められているという、最近の成果を話題にしました。まずは、観測にかかる物質の成り立ち、それを調べるための望遠鏡、顕微鏡、そして加速器の役割を説明。次に、暗黒物質が存在すると考えざるを得ない理由について、銀河周辺部の星の回転速度の問題と、重力レンズの現象を紹介しました。最後にドップラー効果が音だけではなく、光についても観測でき、そのことから宇宙が膨張していることを説き、膨張の原因として暗黒エネルギーを紹介しました。

午後の実験では、KEKの任務とこれまでの成果を簡単に紹介しました。次に、霧箱についてその歴史的な意義(3つのノーベル賞受賞)を含めて説明しました。その後、霧箱を製作し、放射線の観測を行い、アルファ線とベータ線の軌跡の違い、崩壊過程による軌跡パターンの違いなどを観察しました。

講演や実験後には、「宇宙の加速膨張について」や「宇宙物理学者になるにはどうすればいいか」といった質問がありました。アンケートでは、「素粒子がたくさん見えたのが不思議でした」「今までにいろんなげんそが見つかったのにまだ見つかっていないものもあるというのが印象に残りました」などの感想が寄せられました。


講演中の社会連携部・真木晶弘研究員


放射線の通った跡を観察する様子

3月4日(金)には、もう1件の派遣を行いました。京都府の京丹後市立島津小学校で3年生~6年生の児童77名を対象に、「宇宙はなにからできているんだろう」というタイトルでの講演と霧箱実験を行いました。


講演中の加速器研究施設 佐藤皓研究員

講演では、宇宙の成り立ちについて説明し、宇宙のことを調べるためには、素粒子・原子核のことを調べなければならないことを伝え、その手段として加速器が考えられたこと、KEKが現在世界最先端の加速器で宇宙のことを調べていることなどを説明しました。その後、霧箱実験の実施に先立ち、霧箱で放射線の軌跡が観測できる原理としくみを解説。また、ここで用いる放射線源であるマントルの説明を自然放射線の概要を含めて説明してから実験を始めました。全グループがマントルからアルファ線の観測に成功しました。

アンケートでは次のような感想が寄せられました。「まだまだたくさん分からないことがある宇宙はとても不思議だなあと思った。宇宙を調べていたら、素粒子のことにたどりついたのが不思議だった」、「放射線はべつに悪い物じゃなくてレントゲンなどに使っているから不思議だと思った」。


講演中の素粒子原子核研究所 藤本順平 研究機関講師

3月7日(水)、茨城県水戸短期大学附属高等学校で1、2年生20名を対象に、「宇宙をつかまえる」というタイトルで講演を行いました。

最初に、物理学とは何を解明する学問なのかを紹介し、最先端の物理学の知見を伝えました。原子論の確立、加速器の原理、加速器による原子の下部構造の解明、標準理論構築の歴史、Bファクトリー実験の紹介、暗黒物質の紹介を行いました。また、欧州で進行中の大型ハドロンコライダー(LHC)実験や国際リニアコライダー(ILC)計画を紹介しました。

講演後のアンケートでは、「CERN(欧州合同原子核研究機関)やKEKの活動や研究を知ることもできより興味を持ちました。個人的にも調べたりしていきたいと思います」「まだ分からない素粒子がなければ、いろいろと矛盾が生じてしまうことがたくさんあり、その素粒子を見つければすごいことだなと思いました」などの感想が寄せられました。


講演中の木村嘉孝顧問・名誉教授

3月8日(木)には、東京都の大東文化大学第一高等学校で、「宇宙のはじまり‐ビッグバンと粒子加速器」というタイトルで講演を行いました。

最初に、現在の宇宙のすがた、ハッブルの法則、膨張宇宙とビッグバン理論など、宇宙について説明。続いて、物理学理論(法則)、特に量子力学と相対論を紹介しました。また、物質を分解して素粒子にいたる、基本粒子と標準理論、素粒子の創造ほかを説明しました。最後に、粒子加速器について解説。加速方式の違いにより、加速器の名前が異なることや、世界の加速器(KEKBとLHC)、そして将来計画であるリニアコライダーについても紹介しました。

アンケートでは、「加速器を作るには山手線ほどの長さが必要ということを知り考えられないほどのスケールでこういうものは研究していくんだなと思いました。今の研究は個人では絶対できないと思い知らされた」「加速器の大きさにとても驚いた。あれ程の大きさがないといけないのだという研究の大変さも分かった。これから世界の国々がどう協力して研究を進めていくのかがとても興味を引いた」などの感想がありました。


講演中の素粒子原子核研究所 藤本順平 研究機関講師

3月15日(木)、大阪府大阪市の特定非営利法人 翔夢にて、高校生ほかおよそ20名を対象に「宇宙はなにからできているのだろう」というタイトルで講演を行いました。

講演では、加速器が宇宙の謎を解くための装置であり、宇宙がなにでできているのかを調べるために重要な役割を果たしていることを説明しました。加速器の原理、加速器による原子の下部構造の解明、標準理論構築の歴史、Bファクトリー実験の紹介、暗黒物質の紹介、LHC実験の紹介、ILC計画の紹介を行いました。

アンケートでは「改めてサイエンスの重要さを感じて、そして科学者の研究を無駄にしない時代を築いて欲しいと思いました」「頭がふらふらになる程楽しかった」などの感想がありました。


講演中の社会連携部 森田洋平広報室長

3月17日(土)には、愛媛県松山市のCreative Cafe ヒロヤでサイエンスカフェを行いました。

第一部では、小中学生や一般、25名を対象に、「霧箱で見るミクロの世界」というタイトルの講演を行いました。霧箱で放射線を見ながら、加速器を使った素粒子物理学の研究について説明しました。また加速器や測定器の写真を見ながら、最先端の巨大な研究施設が持つ機能美としてのアートと、数式や宇宙の謎を解く研究そのものが持つ哲学的な側面について質疑応答を行いました。

第二部では、「宇宙の謎を解き明かす最先端科学とアートの関係」をテーマに、40名を対象にサイエンスカフェを行いました。ジャズダンスと映像と音楽による公演があり、科学とアートとの関係についての議論を通じて科学者が持つ人間的な側面についての聴衆の関心が深まりました。また霧箱実験が好評でした。

アンケートでは「名前を聞いた事があっただけの事が、今回の授業でよく分かりました。地下であんなすごい事が行われていたのにびっくりしました」「町を取り囲むような加速器や宇宙にはまだ未発見の粒子の方が大多数ということがとても印象的でした」といった感想が寄せられました。


講演中の社会連携部 研究支援員・Belle実験協力研究員 吉見弘道氏

3月20日(火)、東京都港区の広尾学園中学校高等学校で、 「超ミクロの世界の素粒子たち」というテーマで中学生、高校生70名を対象に講義を行いました。

KEKの概要を紹介した後、超マクロの宇宙の大きさから分子、原子までを概説。続いて、超ミクロの世界(原子核さらに素粒子)の概念を紹介しました。 霧箱で素粒子の飛跡の観察を実施。また、過熱状態の透明な液体を満たした空間を粒子が通過することで、粒子が通過した部分の水素が気化し、泡として観測される装置、泡箱実験の説明を行いました。超ミクロの世界の法則について概説。Bファクトリー実験の加速器やBelle測定器の原理および実際の装置について、写真やアニメーションを用いて説明。素粒子像の現状についても触れました。

アンケートでは、「素粒子の研究は10年ぐらいの長い時間をかけてするもので、また、その精度も重視されるというのを知って、おどろきました」「加速器が大きいものだとは聞いたことがあったけど、直径1kmもあると知って驚いた」といった声が聞かれました。

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