第6回サマーチャレンジ開催される

 


伊藤健二 第6回サマーチャレンジ校長による挨拶によりサマーチャレンジが始まりました。

8 月20日(月)から28日(火)までの9日間にわたり「第6回 大学生のための素粒子・原子核、物質・生命スクール サマーチャレンジ」が開催されました。サマーチャレンジは、KEK、日本中間子科学会、高エネルギー物理学研究者会議、原子核談話会、PF-UA(旧PF 懇談会)が共催するサマースクールで、主に大学3年生を対象に、日本の将来の基礎科学を担う若き知の育成を目的として毎年8月にKEKつくばキャンパスで 開催するものです。この期間、研究最前線で活躍する研究者による講義やKEKの施設見学も行われます。なかでも、演習では研究者から直接指導を受けながら 実験や解析を行い、最後には発表するという研究の一連の流れを体験することができます。

初日は小林誠KEK特別栄誉教授による「素粒子研究の歩み」と題した特別講演が行われ、素粒子物理学発展の歴史について紹介されました。学生からは素粒子物理学に関する質問のほか、素粒子物理学の将来の展望を問う質問も出るなどしました。

他 にも、物質・生命や宇宙、素粒子・原子核、数物、放射線など多岐にわたる内容の講義が連日行われました。特に数物の講義では「物理にリー群が現れるのはな ぜか」と題する講義が行われ、数学と物理学との密接なつながりが示されました。様々な分野の講義により、参加者は基礎科学には多くの研究や分野があること を知ることができます。


J-PARCのメインリングの見学

さらに、今年の研究施設見学ではKEKつくばキャンパスの見学に加え、KEKが日本原子力研究機構(JAEA)と共同で運営する大強度陽子加速器施設J- PARCの見学も実施されました。サマーチャレンジでは例年KEKつくばキャンパスとJ-PARCの研究施設見学が実施されてきましたが、昨年の第5回サ マーチャレンジでは震災の影響によりJ-PARCの見学は見合わされていました。懸命な復旧作業によりJ-PARCは運転が再開され、第6回サマーチャレ ンジではJ-PARCの研究施設見学を行うことができました。研究施設見学では、施設案内をする研究者にどんどん質問をするなど参加者の熱心な姿を見るこ とができました。

また、J-PARCの研究施設見学を5日目にはさみつつ、3日目からはサマーチャレンジの目玉である演習が始まりました。 今年は素粒子・原子核コースは9の演習、物質・生命コースでは6の演習が実施されました。演習では大学やKEKの研究者が設定、準備したテーマに基づき、 参加学生が自分たちで実験を行いました。こうして取得したデータに対して、自ら議論し考えることを重視し、最終日にはそれぞれの班が研究会さながらに演習 の成果を発表します。
物質・生命コースでは、秋にも放射光、中性子、ミュオンビームを利用した実験を行う予定です。夏の間は、加速器の運転を停止 しているため、実際の量子ビームを利用することができません。この演習で作成した試料を測定したり、実験から導かれた仮説を秋のビーム実習で確かめるので す。


素粒子・原子核コースの演習の様子。比例計数管を使って宇宙線の計測を行っているところ


物質・生命コースの演習の様子。タンパク質の結晶を作っているところ

サ マーチャレンジ期間中には、キャリアビルディングというパネル討論も行われました。今年は企業で研究をされているパネラーの方もお招きしました。「研究を する」という点では一致するものの、大学での研究活動と企業での研究活動の違いについて知る良い機会となりました。学生からは「大学院に進むまでにやって おくことは?」や「研究をする上で、スキル以外に重要だと思われるものは何か?」といった質問が出ました。「研究分野を決めかねているがパネラーの先生方 はどうやって決めたのか?」という質問に対してはパネラーの一人である奥部真樹 東京工業大学応用セラミックス研究所助教は「自分の好きな分野や興味を持っていることを選んだら良いのでは?そのかわり一生懸命やることと、英語は早めに やっておいた方が良いです。」と述べていました。また、座右の銘に関する質問に対しては、素粒子・原子核コースで万有引力・等価原理の検証の演習を担当し た村田次郎 立教大学理学部教授からは「座右の銘ではないけれど、1年間一生懸命やればその分野の権威になれると先生に言われたことがある。だまされたと思って1年間 一生懸命やってみてはどうでしょうか。」という言葉も送られていました。


キャリアビルディングの様子。それぞれのパネラーから参加者へ様々なアドバイスが送られました。

このように、参加者はキャリアビルディングをはじめとして研究者の生の声を聞くことができました。さらに演習に参加するティーチングアシスタントの学生に対 して、年齢の近い先輩として参加者が研究活動や進路等について質問する姿も目立ちました。特に今年は、サマーチャレンジの卒業生による活躍が数多く見られ ました。サマーチャレンジの卒業生がティーチングアシスタントという形で多数参加したほか、懇親会ではサマーチャレンジの卒業生による世代間交流の呼びか けがありました。

この他にも、サマーチャレンジ卒業生が中心となって立ち上げた数物セミナーや物理若手コロキウムなどサマーチャレンジ卒業生による自主的な活動は大きな広がりを見せ始めています。

このように、サマーチャレンジが参加者にとって基礎科学を志すきっかけとなるとともに、卒業生による縦と横のつながりが将来の基礎科学を支える若手の大きな力の源になることが期待されます。


発表会の様子。最終日には演習グループ毎に成果を発表しました


ポスター発表の様子。他の班の成果に対して疑問に思ったことをどんどんぶつけていました

最終日に行われた修了式では一人一人に修了証書が手渡され、野村昌治 KEK理事より 「基礎研究は非常に大事で、将来に技術的に大きな影響を与えるもの。人類の幸せを支える意義あるものになるはずです。明日の日本を支えるのは皆さんですか ら、サマーチャレンジの経験を生かして頑張ってください。」との言葉が送られました。恒例の校長賞として伊藤健二校長から参加者全員にブルーバックス「放 射光が解き明かす脅威のナノ世界-魔法の光が開く物質世界の可能性-」が贈られ、第6回サマーチャレンジは幕を閉じました。


小林誠 KEK特別栄誉教授を囲む第6回サマーチャレンジ参加者と関係者

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関連サイト

サマーチャレンジHP
数物セミナー
物理若手コロキウム

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