KEKのスーパーコンピュータシステムの演算性能、1ペタ・フロップスを超える

 


KEKのシステムB「BlueGene/Q」
KEKでは、素粒子、原子核、物性物理等の理論的研究における大規模シミュレーション、加速器の設計・運転に関わるシミュレーションを行うために、スーパーコンピュータシステムを運用しています。スーパーコンピュータは、システムA、Bから構成され、システムAは株式会社 日立製作所製 SR16000モデルM1、システムBはIBM社製 Blue Gene/Qです。

このたび、計画していた全ての装置の稼働が始まり、システムBの総理論演算性能が、1ペタ・フロップスを超えることとなりました。フロップス(Flops:FLoating-point Operations Per Second)は1秒間に浮動小数点数演算が何回できるかという能力を表した値です。ペタは1千兆を表しますので、KEKのスーパーコンピュタは、1秒間に1千兆回の計算を実行できる性能となったことを意味します。また、浮動小数点数とは科学計算で用いる非常に大きな数や、非常に小さな数を、コンピュータで扱う数の表し方のひとつです。長さ、重さ、温度など私たちの身の回りにある自然の量は、浮動小数点数で表します。例えば、123456.78という大きな数を、1.2345678×106と表したり、0.0000012345678といった小さな数を1.2345678×10−6と表したりしますが、このように小数点の位置を調整して、10Nという指数によって表すので浮動小数点数といい、コンピュータの中では0と1だけの2進数で表します。

振り返るとKEKのスーパーコンピュータは、1989年に1ギガ(10億)・フロップスを超え、その千倍の1テラ(1兆)・フロップスを超えたのが、2000年でした。そして、今年、2012年に1ぺタ(1千兆)フロップスを超えました。KEKでは、12年毎に1000倍のスピードアップを実現してきました。

なお、計算速度を競うだけではなく、1ワットというエネルギーあたりで計算できる量を算出した、スーパーコンピュータの省エネ・ランキング(2012年6月)では、KEKのシステムは12位を獲得しています。1位は、21億88万フロップス/ワットの米国に導入されたKEKと同じBlueGene/Qで、KEKのシステムは20億9914万フロップス/ワットですので、1位とは0.1%以下の僅差です。KEKのシステムは極めて省エネ的であるといえます。

今後、KEKのペタ・プロップス級のスーパーコンピュータを使って、加速器実験と数値シミュレーションの連携による素粒子物理学、原子核物理学などの様々な分野の進展が期待されます。

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