Bワークショップ2012開催 -実験と理論の学生交流を深める-

 


Bワークショップ2012の様子

2012年11月5日(月)から8日(木)の4日間、岩手県の花巻市でBワークショップ2012を開催しました。BワークショップはB中間子やタウ粒子、チャームクォークなど幅広い物理への理解を深め、それらに関係する研究分野の活性化を目的に実施されています。特に今回は、ワークショップの開催地が国際リニアコライダー(ILC)の候補地の一つである岩手県であったことから、ILCでの物理や、ILCで使われる予定の測定器ILDの検出器開発にまつわるトークも実施されました。スタッフと学生合わせて53名が参加し、実験分野と理論分野の学生による研究発表と、KEKのスタッフをはじめ各大学の教員による講義が行われました。今年は東北大学の石川明正助教が幹事となり、第5回目の開催となります。

講義はこれまでのBワークショップで最大の11件でした。2015年度に向け準備の進められているBelle II実験の検出器やソフトウェアなどの内容に加え、ワークショップの目的に沿うような形でB中間子の物理に限らないタウ粒子に関する新物理や、チャームクォークに関する理論的な講義が行われました。さらにはBelle IIで探索する小林・益川理論を超える粒子反粒子対称性の破れが重要となる電弱バリオン生成についての講義もあり、多彩で幅広い内容が盛り込まれました。研究発表では、学生達が自らの研究発表を行いました。夜には、質疑応答の時間では触れることのできなかった研究発表についての疑問点を学生同士で説明し合うなど、ワークショップならではの密な交流が図られました。

最終日には優秀な発表を行った学生にBest Talk Awardが授与されました。実験分野では「Belle IIに搭載する粒子識別装置TOPカウンターのLikelihood法を用いた性能評価」と題し、Belle IIで使用される検出器TOPカウンターのプロトタイプにおいて、リングイメージの再構成が上手くいっているかなどLikelihood法という手法を用いた性能評価の研究について発表した有田義宣さん(名古屋大学 博士課程2年)が受賞。理論分野では「B→D()τνにおける角度依存性を用いた荷電スカラー効果の制限」と題しB→D()τνという崩壊過程が標準理論の予想よりもズレているという実験結果に対し、荷電スカラー粒子が存在すると仮定するモデルに基づき、測定量の提案を行った坂木泰仁さん(立教大学 修士2年)が受賞しました。Chairperson's Awardには、Best Talk Awardに匹敵する素晴らしい発表を行った学生が表彰されました。実験分野では「B→Xs gammaの崩壊分岐比と非対称度の測定」と題し研究発表を行った齋藤智之さん(東北大学 博士課程2年)、理論分野では「SUSY flavor mixing facing on New data of B mesons」と題し研究発表を行った山本恵さん(新潟大学 博士課程1年)が受賞しました。


Best Talk Awardを受賞した有田さん(手前左)とChairperson's Awardを受賞した齋藤さん(手前右)。受賞者には賞状の他にノーベル物理学賞受賞者である小林誠・益川敏英両博士のサイン入り書籍が贈呈されました。

Best Talk Awardを受賞した有田義宣さんは「こういう結果を出せたのも一緒に研究してきた皆さんのおかげです」と述べ、坂木泰仁さんは「(受賞は)大変嬉しいです。今後も新物理の発見に立ち会えるように頑張っていきたいです」と述べていました。一方、Chairperson's Awardを受賞した齋藤智之さんは「非常にありがたい賞をいただいたので、これに満足せずにこれからも頑張っていきます。ありがとうございます。」と述べ、山本恵さんは「去年は緊張して上手くしゃべれなかったのですが、今年は落ち着いて話すことが出来ました。今回話した結果はまだ途中なので、きちんと完成させて論文にできるように頑張りたいと思います。」と今後の研究活動への意欲を語っていました。

物理学では、提唱された理論を実験で実証したり、理論では説明できない新たな事象を実験で発見したりと、実験と理論の協力は不可欠です。これからの物理学研究を担う実験と理論の学生が情報交換を行い議論する中で、今後の研究を進めていく上での意欲向上に繋がったBワークショップでした。


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