茅葺き屋根保存会 つくばキャンパスで茅刈りを実施
#ハイライト
期間中、のべ200人のボランティアの方が訪れ、茅刈りを行いました。
KEKでは、毎年12月「やさと茅葺き屋根保存会」により、敷地内に繁茂しているススキの刈り取り作業が行われます。今年も12月8日から10日と、14日、16日の合わせて5日間が作業にあてられました。
「茅(かや)」は屋根に葺かれる植物の総称です。山茅(やまかや)と海茅(うみかや)があり、関東では主に山茅とはススキのことをさし、海茅はヨシをさすようです。栄養が低く、酸性の度合いが高い荒廃地でもススキは繁茂・定着できるため、土砂崩れや伐採などにより地表の安定性が失われた場所にも、真っ先に生えます。斜面などで起こる崩落後でも繁茂するため、土砂が流れるのを止める役割を果たします。自然に放置されれば、その後、ススキの原は次第にアカマツなどの樹木にとって代わられ、森へと移行していきます。
こうした性格をもつススキなどの植物は先駆植物(パイオニア)と呼ばれ、森林の回復力の一翼を担っています。そのため、長年にわたって茅葺き屋根の素材としてススキを確保したい場合は、「茅場(かやば)」として、刈り入れや、火入れを定期的に行うことでススキ原の状態を維持する必要がありました。
保存会によるKEKでの刈り取り作業も今年で9回目となり、ボランティアの方を含め、のべ200名の方々により作業が行われました。今年も2000束以上を刈り入れ、刈り入れたススキは、直ちに屋根の葺き替え作業に使われるとのことです。保存会事務局の新田穂高さんにお話をうかがいました。
保存会事務局の新田氏
− 刈り取ったススキは、何棟の家に使っていただけるのでしょう。
今年刈らせていただいた分は、やさと地区に残る約70棟をはじめ、筑波山麓の茅葺き屋根のうち、10軒ほどに使わせていただく予定です。
− 毎年刈り取りされていますが、KEKのススキは使っていただくのに、適しているということでしょうか。
ええ、恐らく日本一状態のよい茅場のひとつといってよいと思います。ススキは植物遷移上のパイオニア植物なので、定期的に刈り取っていないと、良質の茅が収穫できません。この研究所では、刈らせていただく前から、整備のための刈り取りを毎年行っていただいていたので、他の植物の混入が少なく、最適な茅場になっていました。広範囲にわたる生育とともに、状態もよく、そして、平地であることもあり刈り入れの作業に適しています。加えて、アクセスの道路がすぐそばにあるということで、搬出にも適しています。
− いつも、この12月に刈り取りが行われていますが、この時期がよいのでしょうか。
立ち枯れる前の青みの残る茅は、まとめておくと腐熟してしまうので、保存がききません。また、関東はこの時期は晴天が続きやすく、十分に枯れるこの季節の茅が、茅葺きにはもっとも適します。
− 日本の伝統文化の保存に貢献させていただくことができて、KEKとしてもうれしく思います。今後とも、保存会の活動に注目させていただきます。
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