KEKキャラバン、11月は福岡、長崎、京都、東京、鳥取、福島、埼玉に派遣

 

KEKでは学校や社会施設などで行われる授業のサポートとして、地方自治体、NPO等の団体が企画する講習会や勉強会などに講師を派遣しています。11月は福岡、長崎、京都、東京、鳥取、福島、埼玉で実施しました。


講演の様子

11月10日(土)、福岡県糸島市役所で「国際リニアコライダーでヒッグス粒子の謎を解く!」というテーマで講演会が開かれました。「宇宙をつかまえるリニアコライダー」というタイトルで講演を行い、一般の方75名が聴講しました。

講演は、分子・原子についての説明でスタート。加速器の原理や標準理論について解説を行いました。また、将来の加速器である国際リニアコライダー(ILC)について説明しました。欧州合同原子核研究機関(CERN)の大型ハドロンコライダー(LHC)を紹介し、ヒッグスと見られる粒子の発見についての解説を行ったほか、加速器の応用例についても紹介しました。

アンケートでは、「私達は物質は何でできている!?という超素朴な疑問を人類の叡智、技術力で解明しようとしていて、改めて人間ってすごい!と感じました」。「『個性』が見えない基本的な粒子のいろいろな集まりが原子である。その基本的な粒子は何かを知りたい。そのための究極の装置がリニアコライダーであることがはじめてわかりました」などの感想がありました。

11月13日(火)、長崎県佐世保市立広田中学校で2年生161名を対象に、「宇宙はなにからできているんだろう」と題する講演と霧箱の製作実習を行いました。

前半の講義は、KEKの紹介から始まりました。身近な例を挙げながら、歴史的発展を踏まえつつ順次宇宙の成り立ちについての解説を行いました。宇宙を調べるには天体観測だけでなく、素粒子・原子核のことを調べなければならないことを述べ、その手段として加速器が考えられたこと、KEKが現在世界最先端の加速器で宇宙のことを調べていることなどを説明しました。

後半には、霧箱実験に先立ち、霧箱で放射線の軌跡が観測できる原理としくみを説明。また、ここで用いる放射線源であるマントルの説明を自然放射線の概要を含めて説明し、危険なものでないことを理解してもらった上で実験を行いました。全グループがマントルからのアルファ線の観測に成功しました。

アンケートでは、「加速器という機械は初めて聞いて、このような機械を使うことによって原子などのつくりがわかるということで驚きました」、「『研究者だって分からないから研究をするんです』という言葉が印象に残りました」といった感想がありました。


講演中の佐藤晧 研究員


霧箱観察の様子


講演中の中村勇 助教

11月19日(月)には、京都市立堀川高等学校にて、「素粒子と宇宙」「先端加速器と素粒子研究の最前線、加速器の応用」をテーマに講演を行い、3年生91名が聴講しました。

最初に素粒子物理学(実験)についての解説を行い、この世は何でできているのか、また、素粒子と相互作用について触れました。次いで、加速器についての説明を実施。加速の原理やいろいろな加速器と世の中の加速器施設について解説しました。また、ヒッグス粒子や宇宙についても紹介しました。

アンケートでは、「加速器の大きさに驚いた。大き過ぎるにも移動に不便だなと思った」、「粒子という目に見えないものを実験に使って実際に測定できてしまうのがすごいと思いました」などの感想がありました。


講演中の上野健治 名誉教授

11月21日(水)には、東京都立武蔵野北高等学校で、1年生200名を対象に「最先端科学を支えるものづくり」の講演を行いました。

講演では、高エネルギー物理学を支える実験装置の作り方、実際の装置の解説を行いました。まず、対象となる原子、電子、素粒子の話をし、加速器の原理、種類等の説明のあと、各実験装置の概念設計から全体設計、詳細設計、加工、組み立て、完成後のコミッショニングまで解説しました。最後にグローバル化した現在の日本の製造業へ向かう若者へ期待することを話しました。

アンケートでは、「ノーベル賞などをとるような科学者の人はその科学者の人だけの力ではなく、その研究結果を得るための施設、装置をつくる人の力がとても重要だとわかった」、「『ピンチを救ってくれるのは自身の知恵と知識、常識』という言葉が印象に残りました」などの感想がありました。


講演中の菊谷英司 准教授

11月21日(水)には、もう1件の派遣を行いました。鳥取大学で15名を対象に、「大型加速器を使った研究現場から ノーベル賞を支えた実験の紹介」をテーマの講義を実施しました。

KEKの紹介に続いて、加速器の入門の講義を実施。KEKB-Belle実験について説明しました。現在稼働中の大型加速器として、欧州の大型ハドロンコライダー(LHC)やそこで行われている実験について解説しました。加速器の応用例として、粒子線治療加速器を紹介しました。

アンケートでは、「国内の加速器の数が印象的でした」、「つくっているものの規模の大きさに驚いた」などの感想がありました。


霧箱の観察

11月21日(水)と30日(金)に、福島県の伊達市立掛田小学校で、放射線に関する授業と霧箱観察実験を行いました。21日には、5、6年生86名、30日には3、4年生75名を対象に実施しました。

授業では、小学生に対して、放射能と放射線についてまた現状についての簡単な講義を行いました。放射線に対する理解をさらに深めるため、線源と測定器を使い実験を実施。最後に霧箱により放射能から放射線が放出される様子を観察しました。

アンケートでは、「ふだんは目に見えないほうしゃせんが見えてすごかったです」といった感想がありました。


講演中の多田將 助教

11月24日(土)、埼玉県立川越女子高等学校で「素粒子から宇宙まで~すごい実験からうまれるすごいコトとは何か?~」というタイトルで講演を行い、65名が聴講しました。

講演の前半では、大強度陽子加速器施設(J-PARC)で行われている長基線ニュートリノ振動実験を例として取り上げながら、素粒子とは何か、素粒子物理学とはどのような学問か、加速器とはどんな仕組みなのか、物理学の実験とはとういうものなのかについて解説を行いました。後半には、講演内容に限らず、物理学一般についての質問、また、物理学者の一般的な生活についてや、理系に進み、学者となるにはどうすればいいのか等について、質疑応答を実施しました。

講演後のアンケートでは、「日本の素粒子物理学が最先端であることに驚きました」、「CERNの加速器の話はテレビや本など見たり聞いたり調べたりして知っていましたが、日本でこれから作られようとしている加速器の話は知らなかったので、興味が増しました」といった感想がありました。

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