KEKキャラバン、12月は滋賀、大阪、兵庫、鹿児島、山形、岩手に派遣

 

KEKでは学校や社会施設などで行われる授業のサポートとして、地方自治体、NPO等の団体が企画する講習会や勉強会などに講師を派遣しています。12月は滋賀、大阪、兵庫、鹿児島、山形、岩手で実施しました。


講演中の上野 健治 名誉教授

12月5日(水)、滋賀県長浜市立びわ中学校で「最先端のものづくり」というタイトルで講演を行い、1~3年生210名が聴講しました。

講演では、日本の産業を支える自動車工業の中で、特に変速機構に多用されている歯車の紹介とその最先端の作り方(マスプロダクション)について説明。その後、高エネルギー物理学を支える実験装置の作り方(少量、最先端科学技術分野)、実際の装置について解説しました。科学分野では国際協力が欠かせないことを話し、若い世代の人たちが何を理解し、取り組んでいかねばならないかを説明しました。最後に、グローバル化した現在の日本の製造業へ向かう若者へ期待すること、中学校で学んでほしいことを伝えました。

アンケートでは、「日本の最先端の技術は世界にも通用していることを知りました。僕達後輩たちもそういうことに興味を持っていきたいと思いました」、「開発などの説明は難しくて理解するのが難しかったけど、私達もいつか世界を舞台に活躍ができるんじゃないかと、自分の未来に希望を持てました」などの感想がありました。


講演中の三原 智 准教授

12月7日(金)、大阪府立大手前高等学校で1、2年生40名を対象に、「宇宙のはじまり ビッグバンと加速器」と題する講演を行いました。

宇宙が現在も広がっているということを、夜空の星を撮影した写真を取掛かりとして説明。それを遡ることで宇宙の始まりにはビックバンがあったはずだということを、その証拠を示しながら説明しました。その後、ビックバン後の宇宙の進化を決定づける、初期の様子を理解するためには、素粒子の振る舞いを理解することが重要であると解説。そのために素粒子物理学が無くてはならない存在であることを説明しました。また、素粒子物理学の研究手法である加速器についても簡単に紹介。欧州の大型ハドロンコライダー(LHC)、KEKのSuper KEKB加速器、大強度陽子加速器施設(J-PARC)についての説明と、そこで行われている実験についての紹介を行いました。

アンケートでは、「宇宙や素粒子にはまだまだ分からないことが多くあるということから宇宙の偉大さと人間の小ささを改めて知りました」、「今回の講演を聞いて宇宙は宇宙でも星や天体だけでなく、宇宙物理について実験、研究するのも楽しそうだと思いました」といった感想がありました。


講義中の真木 晶弘 研究員

12月7日(金)には、もう一件の派遣を実施しました。兵庫県神戸市立長坂中学校において、神戸市中学校教育研究会理科部の教員16名を対象に「素粒子と宇宙」をテーマに講義と霧箱製作実習を行いました。

前半の講義では、標準模型に基づく素粒子観について説明しました。LHCにおけるヒッグス粒子発見のニュースを受け、ヒッグス粒子についても解説。続いて、膨張宇宙について説明し、素粒子研究が初期宇宙の解明に繋がることを解説しました。また、暗黒物質の存在を示す証拠として、回転銀河の回転速度のデータを紹介。未知の素粒子が暗黒物質の最有力候補とされており、多くの素粒子実験グループがその探索を試みていることを紹介しました。

アンケートでは、「物理の用語が今日の説明を伺い何となくわかり、生徒に説明する際に役に立ちそうです」、「極小の世界と広大な宇宙がつながっているというのがとてもおもしろかったです」などの感想がありました。


講演中の稲垣 隆雄 名誉教授

12月13日(木)には、鹿児島県立大島高等学校で400名を対象に「素粒子物理~質量起源・ヒッグス粒子の発見」というタイトルで講演を行いました。

講演では、素粒子物理と宇宙とのかかわりについて説明しました。素粒子物理の現状、ヒグス機構の概要を解説。2012年ヒッグス粒子を発見したアトラス実験についても紹介しました。科学は特別な動機に基づくだけでなく、「自然の不思議を解き明かしたいという動機」が大切なことを、セファイド型変光星の発見を例に解説しました。

アンケートでは「科学は予言することから始まるということにとてもびっくりしてしまいました」、「宇宙の年齢が137.6±1.3億年というのを聞いてとても驚きました」などの感想がありました。


講演中の宇佐美 徳子 研究機関講師

12月19日(水)には、山形県立米沢興譲館高等学校で1年生200名を対象に、「放射線とその生物影響」をテーマの講義を実施しました。

講演では、放射線・放射性物質の基礎とその性質、放射線と生体物質との相互作用、それによって起こりうる生物影響について解説しました。また、原発事故以降、報道などで公表されているデータ(空間放射線量や食品に含まれる放射能など)の意味や数値の捉え方について説明しました。

放課後には、理系選択の1年生女子を対象に「Rikejo-Kojo講座」を実施。生徒の主催による講座で、講師が大学・大学院時代に所属していた生物物理学研究室の話や、自分自身および研究室の女性の先輩がその後どのような仕事についているかについて話しました。また、放射線の講演を受け、放射線に関して重要な成果をあげた女性科学者(マリー・キュリーやリーゼ・マイトナーなど)を紹介。その後、生徒との対話を行いました。

アンケートでは、「今問題になっている放射線やそうでない身近な自然の放射線についてよく分かった」、「放射線について知ることができてよかった。この知識はいずれ必要になると思った」などの感想がありました。


講演会場の様子

12月27日(木)、岩手県一関市立渋民公民館で「国際リニアコライダーとは」というタイトルで講演を行い、一般の方およそ20名が参加しました。

講演では、最新の動画を用いてILCの原理、施設の概要、実験で得られる物理の内容、特にビッグバンの素粒子の世界を再現することの意義や話題のヒッグス粒子とみられる新粒子に関連する研究内容を解説しました。また、加速器の応用例についても触れ、ガンの早期発見やガンの治療、または創薬、新物質の開発に加速器が使われていることを紹介。ILCに使われている最新技術がいろいろな分野に波及貢献する可能性についても触れました。

講演後のアンケートでは、「ILCの設置について大がかりな工事設備の大変さを感じました」、「(加速器の技術が)医療に使われているということに感心した」といった感想が寄せられました。

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