B-Lab実習授業&筑波サイエンスワークショップ開催

 

2014年5月12日

KEKでは高校・大学生などを対象に、素粒子物理の面白さを知ってもらうための様々な実習プログラムを実施しています。B-Lab(ビー・ラボ)は、KEKのBファクトリー実験で収集されたデータの一部を、インターネットを通じて主に高校の科学部などに公開し、このデータを使って「素粒子探索」を行ってもらうものです。

2013年5~6月に、つくば市の茗溪学園高等学校において、科学部の学生と先生あわせて8名に向けて、B-Lab講習会を3回に分けて実施しました。第一回目の講習会(5月10日(金))では、素粒子とBelle実験についての講義を行いました。第2回目の講習会(5月28日(火))では、1イベント模型の計算表を使った実習を行いました。第3回目の講習会(6月1日(土))では、パソコンを使った実習を行いました。

参加した生徒からは、「プログラミングソフトは初めてだったので、未知のことをするのはわくわく感がありました。」「素粒子の種類や、どういう原理で粒子を探しているのかが分かった。」といった感想が寄せられました。


プログラミングの実習に取り組む生徒たち


講師によるプログラミングの指導

2013年5月18日(土)と6月8日(土)の2日間を使って、東京都小金井市の東京都立多摩科学技術高等学校において、7名の生徒と3名の先生を対象にB-Lab講習会を行いました。B-Labプログラムは、今年度から科学技術科の3年卒業研究の授業に取り入れられています。第1回は素粒子とBelle実験についての講義を、第2回は1イベント模型の実習とパソコンを使った実習を行いました。

参加者からは、「新しい発見があるかもしれないので、わくわくした。」「 プログラムを実際に使って粒子を探すことはいい経験と思った。」などの感想がありました。


Belle実験のデータ(1イベント)をもとに、ピンポン玉を素粒子に見立てて行う「1イベント模型の実習」


ピンポン玉の実習で行った計算を、今度はパソコン上でプログラムを組み行う

2013年12月7日(土)には、KEKつくばキャンパスにおいて、栃木県の佐野日本大学高校の生徒31名を対象にしたB-Lab実習とBファクトリーの施設見学を実施しました。同校の参加は今回で8回目になります。

参加した生徒からは「思っていたよりプログラミングが楽しかった。施設見学で受けた説明も聞いていて面白く、来てよかったと思う。」「パソコンを使った実習がとても面白かったです。施設見学でも興味をひかれるものがたくさんあり勉強になりました。ドラマ「ガリレオ」の撮影で使われたと聞き、びっくりしました。」といった感想が聞かれました。アンケートでは、半数以上の生徒が高校に戻ってからも新粒子探索を続けたいと回答するなど、実習への関心の高さが伺えました。


素粒子とBelle実験についての講義


Belle実験展示室の見学

2013年12月23日(月)から25日(水)の3日間、高校生対象の筑波サイエンスワークショップがつくば市内の研究機関にて開催され、プログラムの一環としてB-Lab実習が行われました。同ワークショップは、京都、滋賀の4つのスーパーサイエンスハイスクール(京都府立洛北高校、京都教育大学付属高校、京都府立桃山高校、立命館守山高校)の生徒が、つくばの研究機関で素粒子・遺伝子・金属などのテーマで実習を行うプログラムで、今回で9回目となります。B-Lab実習には6名の高校生が参加し、粒子の探索に取り組みました。初日の午後に素粒子班だけがBファクトリー実験施設を見学しました。最終日の午後に全てのグループが筑波大学に集まり成果発表会を行いました。


成果発表会の様子


講師による講評

2014年3月5日(水)は、兵庫県立神戸高校にてSSHクラスの生徒38名に対して実習授業を行いました。まず、Belle実験についてビデオで紹介した後、素粒子とBelle実験についてさらに詳しく説明しました。講義の後は1イベント模型の計算表を使った実習を実施しました。


実習の様子


ピンポン玉を粒子に見立てて行う実習で、19イベントのヒストグラムを作成。質量0.5GeV の部分に山があることが分かる。

用語説明

1イベント模型の計算表を使った実習:
1回の電子陽電子反応から発生する粒子のうち、Belle測定器で観測された粒子の測定データ(各粒子の3次元運動量、エネルギー、粒子の種類、電荷)のことを1イベントと呼びます。この1イベントのデータの各粒子に合わせてピンポン玉を用意しておき、通し番号、粒子の種類、電荷を記載します。一方1イベントの測定データを1枚の表にしておきます。 このピンポン玉と測定データ表のことを「1イベント模型」と呼びます。

例として、中性のK中間子「Ks」を探索する場合、Ksはπ+とπ-に崩壊するため、Ksを探すには、π+とπ-を組み合わせてその質量を計算し、そのヒストグラム分布をつくり、なだらかな分布の上に山ができることを調べます。

1イベントのピンポン玉からπ+とπ-を選び、イベント表から対応する粒子の運動量とエネルギーのデータを読み取り、用意した計算表にそのデータを写し取り、それからパソコンの計算ソフトを用いてπ+とπ-を組み合わせた質量を計算します。この計算を1イベントのすべてのπ+とπ-の組み合わせについて行い、ヒストグラムを作る。このような操作を、解析するイベント数の数だけ繰り返します。

パソコンを使った実習では、この一連の計算をプログラムを使って行います。1イベント模型の計算表を使った実習では、手計算でヒストグラムをつくることにより、粒子探索の原理を理解することが容易になります。

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