KEKのクライストロン 重要科学技術史資料(未来技術遺産)として登録

 

この度、KEKの実験装置「クライストロン」が独立行政法人国立科学博物館が認定する「重要科学技術史資料(愛称:未来技術遺産)」に登録され、9月2日(火)に登録証及び記念盾授与式が行われました。

重要科学技術史資料の登録は、「科学技術の発達史上重要な成果を示し、次世代に継承していく上で重要な意義を持つ科学技術史資料」及び「国民生活、経済、社会、文化の在り方に顕著な影響を与えた科学技術史資料」の保存と活用を目的としたもので、平成20年度より実施されています。

今回登録されたのは、2002年に製作された「508.6MHz、1.2MW 連続波クライストロン(E3732、T62)」。トリスタン及び KEKB 加速器の電子と陽電子の加速用に、KEKと東芝により共同開発された世界最大級のUHF帯連続波クライストロンで、世界一安定で高出力であることが認められました。また、現在では世界標準となっている方式(セラミック窓の窒化チタン被覆、RFカプラー)を初めて取り入れるなど、その後の技術開発に貢献した点も評価されました。

授与式に出席したKEK加速器研究施設の諫川 秀(イサガワ シゲル)氏は、「トリスタンからKEKBへの移行期、クライストロンの改良はソケットの改造を要するため、膨大な作業量を伴うもので、躊躇するものがありましたが、決行して良かったと今はつくづく思います。物理から化学まで、また科学から技術まで、色々な分野の方々の協力と貢献の積み重ねでここまで来られました。未来技術遺産とは言っても、クライストロンはバリバリの現役、多くの改良の余地を残しています。学問的未解明や応用の可能性も多々有ります。関連する技術やノウハウを正しく伝承し、これからも加速器科学発展のために役立てたいと思います。」とコメントし、クライストロンの更なる活躍に期待を寄せました。

関連サイト

国立科学博物館 産業技術史資料情報センター

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