SuperKEKB加速器の試験運転開始

 

KEKは、平成22年度より電子・陽電子衝突型加速器 Bファクトリー(KEKB)をSuperKEKBに高度化する改造を進めてきましたが、このたび、平成28年1月25日から線形加速器を立ち上げ、2月1日より円形加速器の試験運転を開始しました。

研究グループは、これまでの6年間で、電子・陽電子を入射する線形加速器、ならびに、電子・陽電子それぞれを蓄積して衝突させる二つの円形加速器(電子リング・陽電子リング)に大規模な改造を施し、2000台を超える各種電磁石など加速器構成機器の立上げ調整作業を実施。現在、線形加速器から円形加速器へのビーム輸送路を調整中です。今後は、まず陽電子リング、次に電子リングの順番でそれぞれの円形加速器にビームを周回・蓄積させ、加速器のビーム調整を進めていきます。

平成22年6月まで運転を続けたKEKB加速器は、世界最高のビーム衝突性能(ルミノシティ)を実現し、B中間子におけるCP非対称性の発見による小林・益川理論の実験的検証を行うなど、素粒子物理学研究及び加速器科学の発展に貢献してきました。KEKBの衝突性能をさらに飛躍的に高めたSuperKEKBでは、KEKBの数十倍の物理実験データを蓄積することにより、宇宙初期に起こったはずの極めて稀な現象を多数再現し、標準理論を超える新しい物理法則の発見・解明を目指すとともに、宇宙の発展過程で反物質が消え去った謎に迫ることを目指します。

なお、電子・陽電子衝突実験の測定器であるBelleも、Belle IIへの高度化が進んでいますが、SuperKEKB加速器の試験運転中はインストールせず、衝突点に7種類の小型センサーを設置し、軌道をはずれたビームが作る電磁シャワーが測定にどのような影響を及ぼすかを調べる実験を行います(BEASTプロジェクト)。

遮蔽体で覆われる前の衝突点付近のSuperKEKB加速器と、アップグレード作業中のBelle II測定器。衝突点付近の赤紫色()の磁石は、KEKB加速器では使われておらず、性能向上に伴い新しく作られ、設置されたもの。(撮影日:2015年9月6日)

遮蔽体で覆われた衝突点付近の様子と、アップグレード作業中のBelle II測定器。(撮影日:2016年2月1日)


ビームの調整をするコミッショニンググループ。左から加速器研究施設の船越義裕教授、紙谷琢哉教授、大西幸喜准教授


コントロールルームのモニターに映った電子ビームを確認する加速器研究施設の小磯晴代 教授


コントロールルームのモニターで確認された電子ビーム

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