ついに観測! 重力波 - advanced LIGOによる重力波の初観測について -

 

アインシュタインが一般相対性理論を発表してからちょうど100年目の2016年2月11日午前10時30分(米国東部時間)、米国のadvanced LIGO(アドバンスド・ライゴ)実験グループからついに重力波を発見したとの報告がなされました。

アインシュタインの一般相対性理論では、重さを持った物体が存在すると時空間が歪み、これが重力となります。 重力波は、物体と物体が回転運動などをした際に、この時空間の歪みが波として伝搬する現象を言います。 重力波の存在そのものは電波望遠鏡による連星パルサーの長期観測から間接的には確認されていましたが、そのあまりの小ささ故にこれまで直接検出されたことはありませんでした。 この小ささは「地球と太陽の間で水素原子1個ほどの大きさを探すようなもの」と例えられていますが、実際にはこれよりもはるかに小さな時空間の歪みが探査されてきました。

今回発見されたのは「GW150914」と名付けられた非常に大きな重力波を伴う事象で、解析の結果、13億光年彼方で太陽の36倍と29倍もの重さを持つブラックホール同士が合体したものであることが分かりました。 連星ブラックホールでは、ブラックホールがお互いの周りを回っている間に重力波によるエネルギー放射で少しずつ軌道が小さくなり、合体直前に大きな重力波を放射すると予想されていました。 今回のGW150914では、合体直前に太陽の約30倍もの質量のブラックホールが光速の約60%まで加速され、最終的に合体する様子が克明に観測されました。 また、合体直後の新しいブラックホールが誕生する様子も観測され、この新しいブラックホールの質量が太陽の62倍であり、重力波として放射されたエネルギーは太陽質量の3倍にも及ぶこともわ分かりました。 さらに合体直後の重力波の波形から初めて「強い重力場」が検証され、誤差の範囲で一般相対性理論の予測と矛盾がないことも確認されました。

これまでにもブラックホールの候補天体は数多く発見されてきましたが、これらはブラックホールよりも遙かに大きな領域に広がったガスから放射されるX線の観測などにより推定されたものでしかありませんでした。 しかし、今回の重力波による観測で、初めてブラックホールそのものを直接観測できたと言えます。 また、理論的には考えられていましたが、「ブラックホール連星」というものが本当に存在し、これらが合体してより大きなブラックホールとなることも初めて確認されました。

このように、重力波による宇宙観測は連星ブラックホールの合体というセンセーショナルなイベントで幕開けとなりました。 今回のGW150914のようなブラックホール連星の合体は、重力波以外で観測する事が難しく、全天を網羅した重力波観測ネットワークの構築が急務となります。 特に、重力波望遠鏡には指向性があるため、イベントの発生場所と重力波の偏光を特定するためには少なくともあと2台の望遠鏡が必要となります。

高エネルギー加速器研究機構では、現在、東京大学宇宙線研究所、国立天文台とともに新しい重力波望遠鏡KAGRA(かぐら)を建設中であり、2年以内に観測を開始する予定です。 KAGRAは加速器科学の技術がふんだんに活かされた最新鋭の望遠鏡です。 KAGRAとイタリアに建設中のadvanced VIRGO(アドバンスド・ヴィルゴ)望遠鏡を加えることで国際重力波観測ネットワークが完成し、ほぼ全天のブラックホール連星合体、中性子連星合体などの重力波イベントを網羅できるようになります。

関連サイト

関連動画

TOP